お食事会の星☆:商社マンより商社事情に詳しいマテリアルガールに、翻弄された2人の男
「あー、礼実ちゃん、ね…」
瑛士は右手で顎を触り、歯切れの悪い物言いをする。
「礼実ちゃんとは、付き合ったというか、付き合いそうにはなった。けど…」
「けど、なんだよ?」
瑛士のはっきり言おうとしない態度に、鉄平の声は強くなる。その態度に、瑛士は観念したとでもいうように声を潜めて話し始めた。
「鉄平さ、俺の女子アナ好き知ってるだろう?当然、礼実ちゃんはど真ん中タイプだったんだよ。だから食事会の翌日に連絡来た時はすげー浮かれちゃってさ…」
「翌日連絡がきた」と聞いて、鉄平はぴくりと反応するが、何も言わずに続きを聞いた。
「何回かデートしたんだけど、あのマテリアルガールっぷりに引いてきちゃって」
苦笑いする瑛士の話を要約すると、礼実は商社マンと結婚して駐妻になることを人生の目標としているような女だったらしい。
瑛士によると、ひとしきり英語できますアピールを聞かされたあとは、これまで所属してきた部署と現在の仕事の内容を事細かに聞いてきたという。
それは、入社してどんなコースを歩んでいるかを聞いて、瑛士が出世コースに乗っているかを判断し、駐在先がどのあたりの国になりそうか見当をつけるためだったらしい。
―そういえば、俺も誕生日を祝ってもらった時に詳しく聞かれたかも…。
「あの子、俺たちより商社の事情に詳しいかもな。たぶん俺たちの年収もだいたい握られてるぞ」
瑛士が皮肉たっぷりに言ったセリフに、鉄平は思わず笑った。
どうやら礼実は、鉄平と瑛士を天秤にかけて、瑛士の方が出世の見込みありと判断したようだ。
「女って怖えぇー。俺、しばらく食事会はやめて、株の勉強頑張ろうかな。で、瑛士みたいにドヤ顔で株の話できるようになったらまた復帰するとか」
「それもいいかもな。社会勉強、世の中を知るため、ビジネスマンの常識として。ま、当然、損することもあるから、最初に買う銘柄はあまり冒険しすぎず、大手で、配当利回りが比較的高い安定株にしとくとかな。あとは、株主優待とかも意外と使えるぜ」
根が真面目な瑛士は、鉄平が半分冗談で言ったことに本気で返してくる。
だが実際、仕事でも食事会でも、瑛士に追い越されるという焦りはある。それを挽回するためにも、株の勉強をして損することはないはずだ。
「なあ瑛士、今夜軽く飲みに行かないか?」
なんとなく、打ち明けておかないとフェアじゃないような気がして、鉄平は礼実との一件を話すことにした。
今ならきっと「俺たちもバカだな」と、瑛士と一緒に笑えると思えたのだ。
―Fin.
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