忘れられない男 Vol.9

“35億”の可能性を信じる女。夢にまで登場した、忘れられない男との最終決戦が始まった…!?

春香が、24歳のとき。

心から愛していた男が、ある日忽然と姿を消した。

その日から、春香の時計の針は止まったまま。食事会に行っても新しい恋人が出来ても、まとわりつくのはかつて愛した男の記憶。

過去の記憶という呪縛から逃れることのない女は、最後に幸せを掴み取る事ができるのか?

最愛の恋人・祐也が姿を消してから3年経った頃。

真紀に誘われて訪れた美術館で春香を待ち受けていたのは、慶一郎と、ホームパーティー再会したばかりの祐也。

「3年前に恋人が突然いなくなって酷い目にあった」と皆の前で爆弾発言した春香に向かって、祐也は「突然姿を消した恋人にもやむを得ぬ事情があったのかもしれない」と告げ、春香は動揺していた。


“地球上に、男は何人いると思っているの?”

今年大流行した女芸人がキレのあるネタを披露しているのを、春香はテレビ越しにぼんやり見つめていた。

そのとき携帯電話が鳴った。親友の恵子からだ。

「もしもし、春香?元気にしてた?」

久しぶりに聞く親友の声にホッとして、春香はここ最近起きた一連の出来事を一気に報告した。祐也と再会したこと、慶一郎と時々会っていること、そして美術館での祐也からの衝撃の一言。

「突然姿を消した男にだって事情がある」という祐也の言葉を聞いた恵子は、怒りに震えた声で言った。

「今更なんのつもりなんだろう…。いい、春香。祐也君の言うことになんて耳を貸しちゃダメ。金輪際、関わってもダメ。電話も無視するの」

でも、と言いかける春香に、恵子はさらに言った。

「慶一郎のことは応援する気満々だったけど、まさか祐也君と友達だったなんてね。祐也君を完全に切るためなら、ちょっと残念だけど、慶一郎とももう距離を置いた方がいいかもしれない」

春香は驚いて叫ぶ。

「えぇ!?慶一郎君のことも切るの?彼、何も悪いことしてないのに?」

恵子に尋ねながら、美術館の帰り道に春香を追いかけてきた慶一郎のことを思い出していた—。

「春香ちゃん、さっきの話、本当?3年前に消えた恋人の話」

春香が無言で頷くと、慶一郎は言った。

「あのさ、実は俺も」

そして言いにくそうな表情で、頭をかく。

「俺も、少しは気持ちわかるんだ。大学時代に別れた彼女のこと、当時2年くらい引きずったから」

春香は驚いて尋ねる。

「でもどうやって、未練を断ち切ったの?」

「ある日、彼女が新しい彼氏と歩いているところを見かけて、気づいた。もう彼女はあの頃の彼女じゃない、俺を好きだった頃の彼女とは別人なんだって。そしたら急に馬鹿らしくなったよ」

そして慶一郎は強い口調で言った。

「春香ちゃん、過去を見るんじゃない。今を見てほしい」

真剣な眼差しに吸い込まれそうになりながら、春香は慶一郎を見つめ返したのだった—。

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