はいすぺさんが通る Vol.7

「普通のサラリーマン」では許してくれない。はいすぺさんの結婚を阻む、親という存在

容姿、学歴、収入。男のスペックは高ければ高いほど良い。

が、同じだけのスペックを女が持ち合わせたとき、果たしてそれは本当に幸せなのだろうか。

東大卒・外銀勤めの楓はいわゆる「ハイスペック女子」。

4年ぶりに再会した憧れの人との関係は、上手く行くかに見えたのだが、なんと相手は楓のことを一人の女としては見ていなかった

意気消沈する楓に、親友であり研修医をしている美里から何やら切羽詰まった様子のメッセージが届く。どうやら彼女も壁にぶつかっているようだった・・・


西麻布の『鮨 海心』のカウンターには、気まずい空気が流れていた。

「別に何も、今すぐ別れなさいって言ってるわけじゃあ無いのよ?私はただ、結婚相手としては賛成出来ないって言っているだけ。」

母親の穏やかな声音に、美里は何も言い返せないでいた。



広尾の病院で研修医をしている美里は、先週から呼吸器内科に配属されていた。

病院研修は配属される科によって拘束時間や忙しさも異なるが、呼吸器内科は比較的落ち着いた科だった。

特に問題が無ければ、19時頃には病院を出られる。

研修医生活を始めた4月からずっと、忙しい科ばかり回っていた美里にとっては、新鮮な感覚だった。

その晩は、母親が広尾界隈で用事があったとかで、せっかく病院の近くに居るし食事でも、ということになったのだった。

美里は母親の言葉には答えず、パリパリの海苔に挟まれた炙り平貝の香りを深く吸い込んだ。

「彼、優しくて良い子なのはママも分かるわよ。でも、うちの病院のことも少しは考えてくれる?」

「・・・そんなこと言ったら、お医者さんとしか結婚できないじゃない。」

「それで良いじゃないの。いくらあなたが優秀だって、女一人で病院経営は大変よ。」

―この話をするのは何度目だろうか。

いい加減聞き飽きた母親の言葉に疲れ、お鮨に意識を戻そうとしたその時。

母親の口から発せられた一言に、美里の箸は止まった。

「大体サラリーマンとあなたじゃ、釣り合わないでしょう。」

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