麗しの35歳 Vol.13

麗しの35歳に大人びたプロポースはいらない。私が欲しいのは、あなたの笑顔だけ

女性の結婚率は、35歳を境に急激に下降する。

だがしかし。そんな悲観を抱くことは一切なく、麗しき独身人生を謳歌する女がいた。

恭子、35歳。

彼女が歩けば、男たちは羨望の眼差しで振り返り、女たちは嫉妬する。恭子は一体、何を考えているのか?

外資系ラグジュアリーブランドで働く恭子と、部下の周平は、一度は瑠璃子の罠にまんまとはまったものの、同僚・理奈の計らいもあってようやく距離を縮めた

恭子はファッション業界の転職セミナーで講演をすることになるが、因縁の元彼も同じセミナーに来ていることを知った周平は、慌てて会場に向かっていた。


今、僕の目の前で、信じられないことが起こっている。

「恭子、俺と一緒に来ないか?」

“あの男”が、恭子さんの手首を掴んで引き寄せ、彼女の耳元でそう囁いた。

僕は呆然とその光景を見つめながら、つい1時間前の出来事を思い返していた—。



「ねえ、君。恭子がどこにいるか知らない?」

セミナー会場で突然背後から尋ねられ、僕が振り返ると、そこには見覚えのある男が立っていた。

「たしか、恭子の部下だよね?恭子、どこにいる?」

以前『37 ステーキハウス&バー』でばったり出くわした、恭子さんの前の会社の人事部の男だ。

「いや、僕は転職したんで、もう部下ではないんですが…」

僕が答えると、男は小さくため息をつき、礼を言う代わりに軽く手をあげて去っていった。

—あいつ…まだ何か企んでるのか…?

また先日のように、恭子さんに心無い発言をして攻撃するのではないか。そう思い始めたら気が気でなく、僕は彼の動きに目を光らせていた。

「ねえ、恭子の会社の人だよね?恭子どこにいる?」

「講演前なので控え室にいると思いますが…」

今度は恭子さんの同僚の人事スタッフを捕まえ、馴れ馴れしく尋ねている。なんだか必死で彼女の居場所を探しているようだ。

そして男は、控え室のある方向の通路に向かって早足で歩き出していった。僕は慌てて彼を追いかける。

「ちょっと!待ってください!」

通路で僕が呼び止めると、男はぴたりと足を止め、ゆっくりと振り返った。

「ああ、さっきの。急いでるんだけど、何か?」

まるで虫けらでも見るかのような視線を僕に投げかける。

「恭子さんに何の用ですか?今、彼女は講演前なので、また変なこと言うつもりなら、やめてもらえますか?」

僕は彼を睨みつけた。

【麗しの35歳】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo