完成された料理の旋律 Vol.2

レストラン アルシミスト

restaurant l'Alchimiste

料理人としての“現在”を皿上に投影する超新星

ビーツの鮮やかな色みに合わせて、ざくろの実や、シェリービネガーに漬けた赤玉ねぎを添える

想像力と創造力――。料理人にとって必要なのは、どちらだろうか。答えは、おそらく、どちらも、だ。想像を形にするには、それなりの経験や知識が要されるが、今年の7月に白金にオープンした『アルシミスト』の山本健一シェフは、独自の感性を皿に描くことができる若手料理人として、近い将来、脚光を浴びる存在となるだろう。

大阪の専門学校を卒業後、京都のフレンチレストランへ。フレンチをやる以上、フランスに行くことは自然の流れと考え、24歳で渡仏。ブルターニュ、アルザス、バスク、ニース、パリなどのレストランで修業を積み、気がつけば8年の月日が経っていたという。「楽しくて、日本に帰ってくる理由がなかったんです」と笑顔を見せる山本シェフは、2010年の「世界のベストレストラン50」でフランス勢のトップに躍り出た『ル・シャトーブリアン』での修業経験もあり、「自由のかたまり」のようなイナキ・エズピタルト氏の発想力の豊かさに、心を囚われたという。

左.温かいスープは、ゲストの前で皿に注がれる。サービスの飯塚麻希子さんの接客も心地よい

右.食材ありきでメニューを考えることもしばしば。だいたい25~30品目の食材をコースに盛りこむ

「僕が働いていた当時からシャトーブリアンは、すごく活気があった。厨房のスタッフが3、4人なのに対して、お客さんが1日90人ということも。そういう状況でマニュアルは通用しないから、その時々で思考を変えつつベストを尽くさなくてはいけない。でも、そういうやり方も性に合っていたのかな」

“自由人”山本健一シェフの店には、いわゆるメニューというものは存在しない。食材名だけが記された暗号のような1枚のシートを頼りに、ゲストは、テーブルに運ばれてくるだろう料理を想像する。2週間に1回のペースでその内容は“更新”され、全11品のコースに用いる食材は、ただのひとつもかぶらせないことがこだわりだ。

誰かがやってきたことを追いかけるのではなく、自身で道を切り拓いてきた山本シェフに、10年後の自分について訊ねると、「日本にいるかもしれないし、海外にいるかもしれない。でも、ここがゴールでないことは確かです」との答えが返ってきた。

葡萄、フォアグラ、チュイル

フォアグラのクレームブリュレは、濃厚でコクのある味わいだ

ヤリイカ、バスク、海藻

ヤリイカのしっかりした旨みと海藻が持つ海の香りが融合した逸品

セップ茸、フォアグラ

温かいスープに、フリーズさせたフォアグラを少量ずつ溶かし入れながら食す

カリフラワー、セルバチコ、スペルト小麦

オリーブオイルのかぐわしい香りが鼻腔をくすぐる

九条ネギ、オレンジ、サーモン

「日本の食材をどんどん取り入れたい」と意欲を見せる山本シェフ

ブーダンノワール、紫イモのチップス

『ル・シャトーブリアン』の味をアレンジしたブーダンノワール

ビーツ、60日熟成牛

肉は田園調布『中勢以』のものを使用。皿上の赤い粉末はフランボワーズ

バナナ、チョコレート、パッションフルーツ

さっくりとした球状のベニエのなかにバナナが

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