東京で、港区で生きるために、おさえておくべき人物
記念すべき私たちが出会ったその日は、そのまま松田さん行きつけの、青山にある会員制のバーへ移動した。
ここは松田さんが楽しむためのバーであり、松田さんの顔見知り以外はVIPエリアには入れない。
店に入り、そのままカーテンで仕切られた奥の空間へと突き進むと、すでに何人かの有名起業家やフォトグラファー、個人的に好きだった元日本代表のサッカー選手たちが集っており、次々と松田さんに挨拶に来た。
中には、有名な俳優もいた。
そんな彼らと一緒にいると、私のテンションは上がる。まるで自分までもが特別な人間になれたような気がするから。
東京は、時として不思議な街である。
日本で最も人口が多いはずなのに、たまにこの街は、ほんの一部の人だけで回しているのかという錯覚に陥る。それくらい、コミュニティーが狭い。
「ここはね、俺と一緒に来ないと入れない場所だから。」
松田さんが、小声で真理亜に囁いている。うっかり忘れていたが、真理亜は今日東京から出てきたばかり。
私は、23年間東京で生きてきて、ようやくこのVIPエリアへのアクセス権を手に入れたのに...
飛び交うシャンパンとテキーラ一気の声が、遠のいていった。
気がつけば深夜2時を回っており、そろそろお開きの時間だ。
ふと真理亜を見ると、松田さんが「送っていくよ」と言っている。私はタクシー代を貰い、一人でタクシーに乗り込んだ。
二人に見送られながら、何故か急に虚しくなる。
私の実家は、東京にある。東京と言っても、少し外れの方だ。大学を出たら一人暮らしをすると決めており、池尻大橋に念願の部屋を借りた。
どうして私は、一人で頑張って家賃を払わなければならないのだろうか。
真理亜のような女性は学生時代からたくさん見てきた。20代のうちから妙に良い家に住んでいる女性たち。
彼女たちには皆、バックアップしてくれる人たちがいた。どうせ真理亜もそんな感じだろう。
そう思っていた1週間後、私は真理亜のSNSを見て思わず携帯を握りしめた。
三田にある『綱町三井倶楽部』で大々的に行われていたハイブランドのカクテルパーティーで、この前のバーにいた元日本代表選手との2ショット写真が投稿されていたから。
慌てて真理亜にメッセージを送ると、サラリとした返事が返ってきた。
—この前のバーで出会ったフォトグラファーさんに連れて行ってもらったの。今度、彩乃ちゃんも一緒に行こうね❤
私も同じ場にいたはずなのに、どうして真理亜だけ...?
いつの間にか、私の心は嫉妬という黒い感情で覆いつくされていた。
▶NEXT:10月17日 火曜更新予定
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この記事へのコメント
自分の稼いだお金で食事してからいってほしいわ
こーいう子って読モとかモデルの仕事だから、主人公は仕事も出来る可愛い頭のいい女になったら、絶対27歳くらいで差がつくから、そんな女ほっといて自分を磨く事だと思う。
23歳ならぜんぜん大丈夫!
顔も負けたくないならプチ整形してもいいと思うし。