不朽の名作スペシャリテ Vol.4

ブレない姿勢が貫かれた本物の味は、どこまでも奥深い

広東料理の正統を示すシェフ、古典料理を紐解くシェフ。
それぞれのアプローチで、中国料理の極致へと到達する。
ブレない姿勢が貫かれた本物の味はどこまでも奥深い。

油をかけつつ揚げる、中国独特の技術が芳しい皮を生む

カントンメイサイ アカサカリキュウ アカサカホンテン

広東名菜 赤坂璃宮 赤坂本店

Special dish
紅焼脆乳鳩(乳鳩の丸揚げ)

1羽¥5,200。乳鳩は、中国(広東)産を中心に、銀座店では茨城産を使うこともあるとか。本来は、カットされてテーブルに運ばれるが、勇気がある方はぜひ丸ごとにチャレンジを!パリパリの皮の美味しさは言わずもがな、皮を打ち破るようにして口中に溢れ出るピュアにして鮮烈な脂の旨味がたまらない。手間がかかるため、3日前迄に必ず予約を。アラカルトの他、コースに組み入れることもできる。

パリパリの皮とピュアな脂が命職人の技が光る逸品

広東料理といえば海鮮というイメージが日本では定着しているが、焼き豚や仔豚の丸焼きなどの焼き物も、広東名物のひとつ。中でも「紅焼脆乳鳩」(乳鳩の丸揚げ)は広東人の大好物。プロならではの技と手間がものを言うこのひと皿は、レストランならではの美味として、広東(香港)では定番の味だ。

「鳩は真水からゆっくりと弱火で煮て、あらかじめ温めておいたタレに入れ、味を染み込ませた後、水飴を全体にかけて1度干す。次に150度前後の油を幾度もかけながら、皮がパリッと仕上がるように揚げていくわけです」。2日がかりで作るその工程を説明してくれたのは、譚彦彬総料理長。秘伝のタレは数種のスパイスを加えて2~3日寝かして熟成させ、乳鳩は沸騰させずに茹であげる。そして、この乳鳩をタレにつける時の温度とタイミングetc、一つ一つの作業を抜かりなくクリアすることで、"脆"と呼ぶに相応しいサクサクと軽やかでジューシーな食感が皮と身に生まれるわけだ。

豚の肉と脂の旨みが充填した219年前に完成された美味

チミ チクロサンボウ

知味 竹爐山房

Special dish
燻煨肉

¥3,600(3人前位)要予約。18世紀、袁枚が著した「随園食単」。現代においてもなお、中国料理のバイブルと称されるこの本にあるのが、「燻煨肉(いぶし肉)」だ。皮付き豚バラ肉を下茹でし、醤油、紹興酒、氷砂糖などを加えた汁で4~5時間煮込む。これを乾燥させたハスの葉、ジャスミン茶、八角、山椒、ザラメなどで10分ほど燻してから、ハスの葉に包んで200度のコンベクションオーブンで蒸し焼きする。誠に手間と時間を惜しまぬ、219年前の料理の再現である。

日々研究を惜しまぬ先に、古と現代がクロスする

昭和30年代に湯島聖堂で生まれた『中国料理研究部』に、1968年18歳で修業に入った山本豊氏。以来数多くの文献に触れ、研究と研鑽を怠らない氏が’87年より守るのが吉祥寺『竹爐山房』だ。スペシャリテとして選ばれた皿は「随園食単」にも載る「燻煨肉」。’89年に南京『金陵飯店』の薛文龍氏が再現した品ベースとなっている。「原本には『醤油と酒でよく煮込み、燻す』程度しか、書いてありません。この行間を薛先生が読み取り、ハスの葉で包んで蒸すという手法を加えたのです」。

日中国交回復後すぐの’76年から中国に幾度となく足を運び、中国料理を学び続ける山本氏にとって、唯一無二、一期一会の味として思い浮かんだのが、肥沃で食が豊かな地域で生まれた淮揚菜のひとつ、「燻煨肉」だったと言う。豆腐のようなほろりとした歯触りにジューシーな脂身、適度に旨みを発散した赤身とが相まって、口に含めば言葉を失う。「おいしいでしょう?」。顔ほころばす氏が魔法使いに見える。

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