美人広報伝説:“魔性の女”の魅力に次々とハマる男たち。「彼女を超える」と決心した日
「・・・社長と、お知り合いですか?」
エリカの問いに、早紀は「そうなの」と微笑んだ。
二人の関係が気になったが、早紀はそれ以上何も言わなかったので、エリカは広報についての話に戻した。
早紀は今、外資系の飲食チェーンのPRマネージャーだ。
かなりやり手のようで、自社のメニューでSNS映えしそうなものを発掘し、それをメディアに拡散。話題商品になったという最近の事例を教えてくれた。
その記事は、エリカも毎日見るニュースサイトで目にしたことがあった。
―さすが早紀さんね・・・。
「早紀さんは、どうやってメディアに展開しているんですか?私この間プレスリリース書いたのに全く反応がなくて」
すると早紀は、プレスリリースの配信サービスを使っていることを教えてくれた。剛も話していた、『PR TIMES』だという。
「今はプレスリリースが大手ニュースサイトにも転載されるし、SNSでも広まったりするから、直接ユーザーの目に触れるチャンスがあるの。エリカちゃんの勤めるようなスタートアップ企業にも、いいんじゃないかしら」
「なるほど・・・。一人でリリース送るのも限界だし、ちょっと西島と相談してみます」
何気なく言った“西島”という言葉に、早紀の目がピクリと反応した。しかしその後はすぐに穏やかな表情に戻り、失敗談を織り交ぜながら、広報としてのこれまでの経験談を、事細かに話してくれた。
早紀の話を聞いていると、広報の仕掛けで新たな顧客層を開拓したり、会社のブランディングになり、それが人材採用にもつながったり。今まで考えていた広報のイメージが、2倍にも3倍にも、広がっていくのを感じる。
―やっぱりこの人、すごいな・・・。
「第二の早紀」と言われて、悔しかったあの頃のことを思い出した。
◆
「それじゃあ、頑張ってね」
別件の予定があるからと、早紀はエリカと剛を残し、店を後にする。
「エリカ嬢、どうだった?エリカ嬢ほどではないだろうけど、彼女もやり手みたいだね」
早紀が去ったあと、剛のそのお世辞はスルーして、エリカは食事中ずっと気になっていたことを口にした。
「なんか、うちの社長知ってるみたい」
「そう、前職のコンサルティング会社で一緒だったらしいよ。エリカちゃんが席を立ってる間に、そんなこと言ってた」
「え!?」
そして剛は呑気にワインを飲みながら、こう言った。
「早紀さん、彼氏がベンチャーの社長だって噂あるけど。もしかして社長のことかもね」
「・・・そうなんですか」
ほのかに想いを寄せる西島まで早紀を好きなのかと思うと、エリカは動揺を隠せなかった。