注文の多い女たち Vol.9

眼中になかったはずが...注文の多い女がメガバンクの年下男に惹かれた理由

「最近、良い出会いがない」

未婚・美人の女性に限って、口を揃えて言う言葉である。

しかしよくよく話を聞いてみると、その言葉の真意はこうだ。

「理想通りの、素敵な男性がいない」

フリーランスでバイヤーをしている亜希(32)も、そんな注文の多い女のひとり。

ふさわしい人」を探して迷走する中、亜希に一目惚れしたというメガバンク勤務の宮田賢治とデートをするも、些細なことで幻滅してしまう

だが、宮田賢治に彼女ができたことを聞かされ、偶然にも二人が仲睦まじく歩く姿を目撃してショックを受ける。


素敵な女性の隣にいた、彼


−はぁぁぁ...。

また深く長いため息を吐いて、亜希はリビングテーブルに突っ伏した。

今日は自宅で、月末に予定しているL.A出張の下調べをしているのだが、まったくもって身が入らない。

少しでも油断すると、あの光景が脳裏に蘇ってくるのだ。

華奢で可憐な美女の横に賢治の姿を捉えたとき、亜希は咄嗟に下を向き、逃げるように踵を返してしまった。隠れる必要なんか、なかったのに。

賢治のことなど別になんとも思っていないのだから、余裕の笑顔で声をかけてやればよかったのだ。

しかしそれができなかったのは、彼の隣に佇む彼女が綺麗だったからだ。美人に弱いのは、男だけじゃない。女だって、美しい女性を目の前にすると怯んでしまうもの。

そして、本当に愚かだとは思うのだが、賢治が美女を連れている光景を目の当たりにした途端、亜希の中で、これまで眼中になかったはずの男の株が急騰したことを認めざるを得ない。

賢治は、素敵な女性に選ばれた男−。

そんなフィルターを通して記憶を呼び起こしてみると、今度は彼の良いところばかりが見えてくる。

実際、賢治は爽やかで好感の持てる男だった。(語学ができないことに、目を瞑れば)

...男を見る目に自信を失っている女は、他者の評価にいとも簡単に左右されてしまうのである。

【注文の多い女たち】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo