昨秋オープンの新店ながら、すでに漂う気品と風格
「お客様と向き合える、カウンターのある店がやっぱりいいなと」凛とした空気の漂う店内で、店主の先崎真朗氏は言う。西麻布は「土地勘があった」場所で、『西麻布 拓』では開店時から料理を中心に担当してきた。カウンターにこだわったのは10年ほど、大阪で修業しており、最も長く居た店がカウンター主体の割烹だったから。孟子の「ただひたすらに自らを尽くして身を修める」という意味の言葉から二文字を頂戴し、店名とした。
「漢詩に詳しい祖父が喜寿のお祝いの時に自分で揮毫した言葉」軒先に見られる店名はお祖父様の字をそのまま使ったもの。意味はもちろんだが「祖父の書く字が好きだったから」と笑う。どこか飄々とした人柄なのだ。しかし、料理は堂々たる風格と艶やかな気品漂う仕上がり。
12,000円のおまかせコースのみを供し、「奇を衒わず、シンプルに美味しいもの」と語る10品ほどからなる。基本型はあるが客に応じて量など、臨機応変に対応する様はすでに百戦錬磨の手練のよう。佐賀の出身ゆえ九州からも多くの食材が届き、器は「好きで集めていた」骨董品や作家ものが揃う。支度ぶりも、全てにおいて抜け目がない。ここはやはり店主と向き合うカウンターに。そうすればきっと虜になる。