人形町の女 Vol.6

幸せな結婚、キャリアアップ。失敗を恐れて“何も選べない”女

結婚して家を買い、そして子どもを授かる。

今まで「幸せ」だと信じて疑わなかったもの。

しかしそれを信じて突き進んでいくことが、果たして幸せなのだろうか?

外資系化粧品会社でPRとして働く祐実、29歳。

結婚生活3年目。夫の浮気が発覚し、別居を決める。心機一転、人形町での暮らしを楽しもうとする祐実だったが、いまいち吹っ切れない

そんなとき、祐実にある転機が起きる。


「祐実さん、ちょっと来てくれる?」

母親と会って憂鬱な気分のまま迎えた、月曜日。

10時に出社して席に着くと、祐実は上司である麗子から呼び出された。

「はい……?」

月曜日はいつも、13時からチーム全体のミーティングがある。その前に話したいこととは、一体何のことだろうか。

「朝から、悪いわね」

会議室に入り、麗子はそう言って微笑んだ。

隙のない完璧なメイクに、体のラインがくっきり出る白いワンピース。上司としてだけでなく、女性としても完璧な麗子といると、自然と背筋が伸びる。

「いえ。何か、ありました?」
「実はね。菜々子さんに子どもができて、会社を辞めることになったのよ」
「え!?そうなんですか?」

菜々子は祐実のチームのマネージャーで、今年で35歳になる。昨年結婚して、待望の子どもを授かったらしい。

「良かったですね。でも産休ではなくて、辞めてしまうんですね」
「そうね。彼女はもともと体が強い方ではないし」

祐実の知る限り、麗子はずっと子どもを欲しがっていた。そしてたしかに、“今の仕事量じゃ、子育てと両立できる気がしない”と言っていたのを思い出した。

「それでね、祐実さん」

麗子は真剣な眼差しでこう続けた。

「あなたをマネージャーに推薦しようかと思うのよ」
「え!?私に?」

それは、青天の霹靂だった。

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