人形町の女 Vol.4

人形町の女:私は女として、何か欠落しているの?夫との別居後につきまとう、ある呪縛

結婚して家を買い、そして子どもを授かる。

今まで「幸せ」だと信じて疑わなかったもの。

しかしそれを信じて突き進んでいくことが、果たして幸せなのだろうか?

外資系化粧品会社でPRとして働く祐実(29)は、結婚して3年目を迎える。

子作りに励む祐実だったが、今の生活に疑問を持つようになる。2人は徐々にすれ違い、祐実は純から浮気の匂いをかぎ取る。


夫がまとっていた、自分以外の女の、人工的な甘い香り。

その香りが何を意味するのか。

祐実は瞬時に理解したものの、心が追いつかなかった。

まさか自分の人生に、「夫の浮気」という事件が起きるなんて、想像していなかったのだ。大学時代に知り合って、丸10年。祐実と純は、固い絆で結ばれていたはずだ。しかし、この件で祐実は痛烈に思い知らされた。


夫だって所詮は他人だ、ということを。


喜びも悲しみも共有し、まるで自分の一部のように思っていても、純が何を考えていたかなんて、分かっているようで全く分かっていなかったのだ。

その夜、祐実は純を静かに問いただした。

すると純は土下座しながら謝った。そして、祐実には隠しごとをできないと、あっさりと実情を暴露した。

「ほんっっとにごめん!!……会社の同僚と飲み会の帰りに、そういうことになって」

あまりにも正直に言う純に、もっと嘘をついたり、言うのを渋ったりすればいいのに、とそんなことすら考えてしまう。しかしそんな祐実の心は露知らず、とどめのようにこう言ったのだ。

「つい出来心で……。何回か関係があっただけなんだ。でも俺が愛してるのは、祐実だけなんだ。それだけは絶対に、何があっても、信じてほしい」

―“つい出来心”なのに、“何回か”?

後半部分の“愛してる”は、全く胸に響かなかった。

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