「食事会だと1回でたくさんの人と会えるけど、本気で彼女探してる人っていないじゃない?」
亜美のその言葉に、茜も大きく頷いている。確かに、それは桃香も認めざるを得ない。
最近の食事会は「出会いの場」というより、「その場を楽しむだけの飲み会」と化していることが多い。「彼女がいる」と平然と言う人もいるし、既婚者が来ることだってあるのだ。
「マッチングアプリは、男の人も最初からデートを望んでいるわけだから、効率的よ」
「効率的って…。そもそも全く知らない人と会うのって抵抗あるわ」
まだ抵抗感を示す桃香に対し、亜美はこう説明した。
「でもね、桃香。食事会の後にデートして、いいなって思った人っている?」
この質問には、答えを窮した。
確かに数え切れないほどの食事会に行っているが、彼氏は一向にできない。周囲を見ても、食事会で彼氏ができた子は、体感的に10人に1人いるかいないか。つまり10%以下、だ。
しかしそれでも、マッチングアプリには抵抗があった。仮にいい人がいても、そうしたものに頼っているという自分のプライドが許さない。
「確かに、食事会でうまくいったことはないけど…。でもやっぱり、抵抗あるわ」
「そうかしら?今の時代、普通よ。そんなこと気にしてる方が、時代遅れになるわよ」
亜美は、IT系の広告代理店に勤めているだけあって、新しいものに何の抵抗もない。一方桃香はトレンドには敏感だが、異性関係にはかなり保守的なタイプだ。亜美とは、そもそもタイプが違う。
すると2人のやり取りを何も言わず聞いていた茜が、おずおずとした口調で桃香に言った。
「最初は抵抗あったけど、やってみると案外面白いんです。桃先輩も、登録だけしてみるのはどうですか?」
やや上目遣いで話す茜は、大手損害保険会社の一般職で、桃香と同じく恋愛には保守的なタイプだ。
「そうねぇ…。考えとくわ」
桃香のその言葉をきっかけに、それまで一切会話に入ってこなかった聡子が、別の話題を振ってきた。
聡子もきっと、マッチングアプリで彼氏を作るなんて考えられないのだろう。
◆
帰宅後、聡子から連絡があった。
—今日は言い出せなかったけど、来週水曜日食事会するから、よろしくね!
そのLINEに「もちろん」と即レスした。
そう、出会いはまだ星のようにあるはずだ。
マッチングアプリなんかに頼らなくても、私はまだまだイケる。
そう思い、自分を強く奮い立たせた。
▶NEXT:6月14日 水曜日更新予定
桃香の身近なあの人も、実はマッチングアプリで出会っていた…!?
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この記事へのコメント
まぁ地雷も多いけど…