東京・ホテルストーリー Vol.7

東京・ホテルストーリー:自己満足なんて言わないで。幸福な花嫁を襲う、結婚式のジレンマ

東京の女には、ホテルの数だけ物語がある。

「ホテル」という優雅な別世界での、非日常的な体験。それは、時に甘く、時にほろ苦く、女の人生を彩っていく。

そんな上質な大人の空間に魅了され続けた、ひとりの女性がいた。

彼女の名は、皐月(さつき)。

これは、東京の名だたるホテルを舞台に、1人の女の人生をリアルに描いたストーリー。

埼玉出身のごく普通の女子大生だった皐月は、社会人になり東京生活を謳歌していた。27歳での結婚願望見事に砕け散った彼女だが、30歳の誕生日には、思いがけずプロポーズを受けた。


「僕と、結婚してください」

女の人生を変える一言、といっても過言ではない、このセリフ。

私はそれを、30歳の誕生日に、何の心構えもなく耳にすることになった。

目の前に差し出された美しい薔薇の花束、贅沢なスイートルーム。そして、怯えたように瞳を揺らしながら、まっすぐに私を見つめる恋人。

まるで映画のワンシーンを切り取って貼り付けたような光景に、私は柄にもなく本気で心を打たれ、しばらく言葉を失った。

春斗との交際はまだ3ヵ月ほどで、喧嘩などはないものの、特に目立った盛り上がりもなかったから、まさかプロポーズされるなど、本当に予期していなかったのだ。

彼の行動力に尊敬と感動を覚えながらも、しかし私は頭の隅っこで、「来るべきときは、こうやって来るのか」なんて、このプロポーズというイベントを冷静に受け止めてもいた。

「......はい」

やっとそう返事をしたとき、きっと20代とは異なるだろう30代という人生が、ゆっくりと動き出した気がした。

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