港区おじさんコレクション Vol.4

現代版・光源氏プロジェクト。冴えなかった男を素敵な港区おじさんに育てる方法

外資系投資銀行でバックオフィスを担う、有希、30歳。

港区の酸いも甘いも知り尽くした彼女に与えられた呼び名は、“港区おじさんコレクター”。

業界のスーパースターである勇人のお気に入りポジションを手に入れ、後一歩を踏み出さずにとの甘い時間を楽しむ有希。時には慎吾のように銘柄整理も行う。

彼女が月日をかけて育てた港区おじさんとは。


12:00 PM

「ごめんごめん。会議が長引いちゃって。」

有希は階段をあがり、『ローダーデール』のテラス席に腰掛ける。

「いつもの頼んでおいたから。」

トレーニングのアプリ「Nike+Run Club」から目を離さないまま、が答える。聡は、前のチームの2個上の先輩だ。年が近いこともあり、気分転換にコーヒーを買いに行ったり、ストレス発散に飲みに行ったりをする仲を8年近く続けている。

2人は毎月お目当ての「あるもの」のためにランチをする。今回は、勇人を紹介してもらったお礼も兼ねて、有希が奢る約束になっていた。

「お待たせ致しました。ビーフバーガーのお客さま。」

店員さんが聡の前にプレートを置こうとすると、

「俺、サラダなんで。」

と遮る。驚いた顔で見つめる有希に目もくれず、相変わらずアプリをいじり続けている。

そもそもこのランチは、お互いハンバーガーが好きなことから始まった。

オフィスの周辺で美味しいお店を探して、毎月ランチに行くのを有希は密かな楽しみにしていた。そのはずなのに、目の前の聡はサラダ・プレートをぱくついている。しかもドレッシングなしで。

空気を読め!こじらせ男子の独りよがり。


前からジムでのトレーニングにはまっていた聡だが、トライアスロンの試合を控えて、ますますトレーニング・オタク具合に拍車がかかっている。

「頼む前に言ってよ」という言葉をアイスティーで流し込み、有希は目の前のハンバーガーに目を落した。異動してしまった有希からすれば、聡に会えるのであれば別にハンバーガーでなくても良かったのだ。

男性も女性も独身でいる期間が長くなると、自分の生活スタイルができあがる。聡も以前に比べて少しずつ話す内容が「俺」中心の話になってきた。

男女が一緒にいるのは、1+1が2になるのではなく、1+1が1になる作業。1+1が3や4になるのは綺麗ごとで、時には相手に妥協して自分が0.3や0.4になることもある。それが許容できないのであれば、パートナーなんてできやしない。

そんな完成された独身男・聡を目前に、有希はある男性のことを思い浮かべていた。

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