港区おじさんコレクション Vol.1

港区おじさんを「コレクション」しポートフォリオを組む女、現る

外資系投資銀行でバックオフィスを担う、有希、30歳。

彼女は「業界内での出世」を狙うべく、様々な港区おじさんと関係を深めていく。

業界内にとどまらず、事業会社の地位ある人物にまで触手を伸ばしていき、港区の酸いも甘いも知り尽くした彼女に与えられた呼び名は、“港区おじさんコレクター”。

最初は出世のための社交だったものの、徐々に港区おじさんの世界にハマり、港区おじさんのポートフォリオを組むようになってしまった有希が、港区の裏側を暴いていく。


働く先に見えたもの、導き出した答え


AM6:00

静まりかえった部屋にアラームが鳴り響き、有希の1日が始まる。

暗闇の中でガウンを羽織り、浴室に向かうと、テレビから流れる就活生のニュースが有希の背中を追いかける。

―あれからまた、1年が経ったのか。

嫌な記憶を振り払うように、熱いシャワーを頭から浴びる。

有希達は、リーマンショックの代償を真正面から受けた世代だ。きっと1年違えば、華々しく出世街道を走っていたであろう仲間が、内定取り消しや一斉解雇でその将来を奪われていった。

なんとか内定を手に入れた有希も、最初の頃は「顔で就職した」と妬まれ、暫く人と会うことを避けて過ごした。働き始めた頃からマッチの炎のような光さえ見えてこなかった私たち世代に、「若い頃は俺たちも昼夜問わず働いた、我慢だよ」というバブル世代の言葉は、刃のように突き刺さる。

知っているだろうか。高年齢者雇用対策によって、私たち80年生まれ世代の下積み期間の延長は確定し、バブル世代に引き続き富が流れ続けるシステムが確立されたことを。



―今晩、有希ちゃんに会えるのが楽しみだな。 勇人
―来週帰国するよ。水曜日の夜、空いてるかな? 賢
―案件もひと段落したので、ゆっくり飲みに行きましょう。 慎吾

シャワーからあがり、バスタオルで身体を包むと、携帯電話に届いたメッセージを確認する。無論、誰ひとり彼氏ではない。彼らは、有希がブランド品のように集めるコレクション。

富める者が富む世の中ならば、還元してもらおう。これが、有希が導き出した答えだった。

しかも1人の男性に全てを求めるのではなく、複数人から。それぞれに役割を与え、その集合体から甘い蜜を吸い上げるのだ。

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