結婚願望のない男 Vol.16

輝くダイヤに傷があってもいい。失恋の傷が癒えぬ女が知った、婚約指輪の真の価値

私の大好きな彼氏には、結婚願望がない。

それを知ったのは、30歳の誕生日。順調な交際を2年も過ごした後だった。

東大卒のイケメン弁護士・吾郎との「結婚」というゴールを、疑うことのなかった英里。彼が結婚願望ゼロと知った日から、不安と焦りが爆発。

度重なるケンカの果てに、とうとう吾郎との破局を迎えた英里。傷心を乗り越え、結婚願望のある男・きんちゃんと平和な交際をスタートするが、デート中に偶然吾郎と再会してしまい、またしても激しい言い争いとなった。


巷で、よく耳にする格言がある。

「結婚したくないと言っていた男に限って、次の恋人とアッサリ電撃婚したりする」

というものだ。

結婚願望のない彼氏を持つアラサー女にとって、これほど悲惨な事態はない。

その男に、年単位の時間を費やしたのなら尚更だ。

英里が吾郎に執着し、惨めにすがったことで後味の悪い破局を迎えてしまったのは、そんな恐ろしい未来を危惧したからでもある。

吾郎のことを本気で愛していたのは事実だが、単純な失恋の傷に加えて、他の女を「妻」に選ばれようものなら、女としてのプライドはズタズタになる。

『ビストロ・マルクス』で吾郎に寄り添っていた、英里よりも2、3歳は若そうな美女。自分を思い切り見下した、吾郎の冷酷な視線。

英里は、噂の最悪な結末が、自分の人生に実際起こり得るのを目の当たりにしたのだ。

きんちゃんとの関係はこれ以上ないほど順調で、気持ちも徐々に追いつきつつある。

しかし、吾郎との失恋の傷が完全に癒えていたわけではなかった。哀しいかな、人の気持ちはそう簡単に切り替えられるものではない。

―お前にピッタリな相手が見つかって良かったな―

まだ不安定だった英里の心は、吾郎の痛烈な嫌味によって、完全に乱されてしまった。

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