上京10年目 Vol.8

いろんな“初めて”を共有した昔の恋人に、幸せな姿を見せつけられ心震える一人の夜

―東京にいる意味って、何だろう―。

仕事のため、夢のため、欲望のため……?

上京10年となる節目の年に、人はあらためて問う。

自分が東京にいる意味と、その答えを。

28歳の朝子もその一人。朝子が抱える東京への固執と葛藤は、どこに着地するのだろうか。

18歳で上京した朝子だが、このまま東京にいていいのかという迷いが芽生え、東京と故郷の間で気持ちが揺れ始める。法事で実家に帰り地元の友達と集まったことで故郷への想いは募り、東京に戻る飛行機の中で初めて、上京したことを後悔して泣いたのだった。


地元への帰省から東京に戻っても、気分はしばらく晴れなかった。

忙しく仕事をしている時は平気でも、終電近い帰りの電車の中や、深夜のスーパーで残り物のお惣菜がまばらにぽつぽつ並んでいる光景を見た時、すり減ったヒールのかかとを見た時なんかに、ふいに寂しさに襲われた。

「どうすればいいんだろ……」

部屋で一人、呟く回数が増えた気もする。

こんな気分のまま家にこもるのはよくないと思って、近所にある代官山の蔦屋書店に行ったり、意識して外に出るようにはしているけど、それでもふとした時、本当に簡単に私の心は安定をなくす。

春のにおいを感じたり、額にうっすら滲む汗を拭うときに、幾分晴れやかな気持ちになっても、それはすぐに消えてしまう。

だから、良太くんから久しぶりに誘われても、なんだか気乗りがせず億劫だった。でも、こんなモヤモヤを抱えて一人でいるのもよくないと思って、久しぶりに彼とご飯を食べることにした。

帰省のときにお土産用に買った一風堂のラーメンを持ち、一人暮らしの部屋を出た。

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