上京10年目 Vol.7

仕事と家族、どちらも大切なのに両方選べない。地方出身者のジレンマに揺れる女心

―東京にいる意味って、何だろう―。

仕事のため、夢のため、欲望のため……?

上京10年となる節目の年に、人はあらためて問う。

自分が東京にいる意味と、その答えを。

28歳の朝子もその一人。朝子が抱える東京への固執と葛藤は、どこに着地するのだろうか。

18歳で上京した朝子だが、このまま東京にいていいのかという迷いが芽生え、東京と故郷の間で気持ちが揺れ始める。法事で実家に帰り地元の友達と集まったことで、故郷への想いは募る一方だった。


東京に戻る日の朝、荷物をすべてスーツケースに戻すと、一瞬だけ賑やかになった実家の私の部屋は、またいつもの静寂を取り戻した。

カーテンを閉めて、薄暗くなった部屋。まるでホテルのように、生活感のない室内。

「朝子が帰ってくると、洗面台がごちゃごちゃになる」

それは以前、父から言われた言葉。たしかに、普段は父と母しか使わない洗面台は、スッキリしたものだ。

でも私が帰ると、ヘアオイル、ヘアクリーム、コンタクトレンズのケア用品、髪を巻くコテ、基礎化粧品なんかをズラリと並べるから、どうしてもごちゃごちゃになってしまう。

「ごちゃごちゃになる」と父は呆れながら言うけど、その顔はいつも満足そうで、今朝私のものを片付けてすっきりした洗面台を、父は少し寂しそうな顔で見ていた。

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