二子玉川の妻たちは Vol.19

二子玉川の妻たちは番外編:引退したサロネーゼ、“デコ弁アーティスト”へと華麗なる転身

結婚は、女の幸せ。

しかし結婚しただけでは満たされない。女たちの欲望は、もっと根深いものだ。

ポーセラーツサロン界でトップの座を欲しいままにしていたカリスマサロネーゼ・マリ。女たちからの羨望に酔いしれ、トップの座に固執していた彼女だが、CA時代の後輩で白金妻となった香織との再会で目が覚める。

下層階でおうちサロンを営む由美トップの座を譲り、目に見えぬ妻たちの階級争いから身を引いたはずであった。

しかし、一度味わってしまった羨望の味。その快感の中毒性は、まさに麻薬。

マリはやはり、その味を忘れられなかったようである…。


永く続かぬ、平穏な日々


二子玉川のシンボルともいえる、高級タワーマンションの最上階。

そう、ここは永らくポーセラーツサロン界でトップの座に君臨してきた、カリスマサロネーゼ・マリの自宅である。

表面には品の良い微笑みを浮かべ、気高く振る舞う二子玉川の妻たちが水面下で繰り広げるヒエラルキー闘争。その永遠に続く醜い争いから身を引いたマリは、未だかつてない心穏やかな日々を過ごしていた。

風の噂で、同じマンションの階下、33階に、お嬢妻・薫が新たにティーサロン兼ポーセラーツサロンを構えたと耳にした。(マリのポーセラーツサロンLuxeに通っていた、噂大好きマダム筋からの情報である。)

薫は、せっかくマリの引退トップの座を勝ち取った由美からその椅子を奪おうと画策しているのだとか。

マリは一度、エントランスで薫らしき人物とすれ違った。

彼女は、一点の翳りも見当たらぬ真っ白なワンピースに身を包み、お嬢様然とした穏やかな微笑みをたたえていたが、すれ違う際のほんの一瞬…上から下までマリを品定めする視線を向けたのを、マリは見逃さなかった。

―由美も、厄介なライバルを持ったものね。

そんな風に思っても、所詮は他人ごと。42階の最上階から、高みの見物である。

しかしやはり、女というのはどうにも業の深い生き物である。心穏やかに過ごす日々に、マリはかつてない幸せを感じていた、はずだったのだが…。

幸せに慣れてしまうとなぜだろう。心が無意識に、刺激を求めてしまうようなのだ。

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