結婚願望のない男 Vol.10

「独身女=負け組」なんて風潮がなければ、私は幸せだった。結婚の呪いに負けた女

私の大好きな彼氏には、結婚願望がない。

それを知ったのは、30歳の誕生日。順調な交際を2年も過ごした後だった。

東大卒のイケメン弁護士・吾郎との「結婚」というゴールを、疑うことのなかった英里。彼が結婚願望ゼロと知った日から、不安と焦りが爆発。占いに行き友人にもアドバイスを求めるが、吾郎は「結婚は嫌だ」の一点張り。

そんなときに出会った、結婚願望のある男・きんちゃん。英里は二人を両天秤にかけることを試みたが、あっさりと吾郎にバレてしまった。


「お前が西麻布のど真ん中で、太った男とベンツに乗り込むのを見たんだよ。単刀直入に聞こう。あの男は何だ?あの日お前は、咲子と萌と映画に行くと言ったはずだ」

吾郎は血走った目で英里を見据え、地響きのような低い声で言い放った。

吾郎との未来を悩みに悩みんだ末、彼ときんちゃんの二人を天秤にかけて様子を見ようと決心した英里であったが、計画は早々に失敗してしまったのだ。

「......彼は“きんちゃん”って言って、ただの友達!咲子と萌じゃなくて、私は友達と映画に行くって言ったわ」

殺気立つ吾郎に怯えながらも、英里は震え声で反論する。ズルい考え方ではあるが、実際に嘘はついておらず、きんちゃんは“ただの友達”なのだ。

「お前......そんな言い訳で、この俺が納得すると思ってるのか?」

吾郎は乱暴に立ち上がり、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、喉仏を大きく上下させてゴクゴクと飲み干した。

週に数回ハウスクリーニングを頼んでいる吾郎の部屋は、リビングもキッチンもピカピカで無機質だ。

「俺と結婚したいだの騒いでおきながら他の男とイチャつくとは、お前も大層な“港区女子”だな。ちなみに軽率な行動は、結婚を検討する上で大いにマイナスになるぞ」

吾郎の嫌味に、英里も感情の糸がプツンと切れた。

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