2017.02.26
婚活は、ワインスクールで Vol.130代前半の女性でも、ワインスクールでは若手でいられる
授業初日、自己紹介を終わると、美咲はクラスメートたちの顔を順に目で追っていった。ここにいるのはこれから半年間、一緒にワインを勉強していく仲間たちだ。
約30名のこのクラスは男女が大体半分ずつ。麗子が言う通り、男性は確かにそうそうたる職業の集まりで、医者や弁護士、レストラン経営者、外資系金融勤務の者などがいた。
まさに、社会の上澄みばかりを集めたような場所で、美咲のテンションは一気に高まる。
女性は30台半ばから40歳までが最も多く、美咲はこの中では比較的若手に位置するように見えた。
後半の授業がスタートし、美咲は生まれて初めての「ブラインドテイスティング」を経験した。
目の前に4つの小ぶりのワイングラスを並べ、そこに4種類のワインを注いでいく。ワインボトルは中が見えないようカバーで覆われており、番号がつけられていた。
「まずはそれぞれのワインを飲んだ感想を、隣の席の方と自由に意見交換してみましょう。」
先生の指示で、美咲は隣の席の女の子とグループワークをすることになった。最初の自己紹介で芹那と名乗った女性だ。
彼女は大阪出身の26歳で、専業主婦をしているが世界を広げたくてスクールにやってきたそうだ。好きなワインの種類や生産地についても饒舌に語り、すでにそれなりの知識を身に着けているようだった。
テイスティング用のメモをとるためのシートにも、すでにびっしりと何かを書き込んでいる。
「1番のワインは、ブルーベリーのような特徴が強いですよね。2番はブラックチェリーとビターチョコレートの香りがとれたかな。こっちはカベルネ・ソーヴィニョンじゃないかなあ。あなたの意見はどう?」
芹那に一気にまくしたてられ、ここは初級コースなのにこんなに詳しい人もいるのかと、美咲は驚いてしまった。しかし他のグループをキョロキョロと見回すと、皆お互いに何をコメントしていいかわからないといった風に顔を見合わせて苦笑いをしている。
—よかった、初心者は私だけじゃないようね。
美咲はほっと胸を撫でおろした。
芹那は、明るい髪色のショートボブに、エクステをたっぷりとつけた長いまつ毛をしたためている。専業主婦だと言ったが、どうしてなのか彼女からは家庭の香りが一切しない。そして、美咲が今まで会った女友達には無い不思議な雰囲気を持っていた。
ぼんやりそんなことを考えていると、それまで意気揚々とワインへのコメントをしていた芹那が、急に声をひそめてそっと美咲に耳打ちをした。
「ワインスクールってオバさんばっかりやね。あたしみたいな若いコあんまりおらへんし、美咲ちゃんかわいいから仲良くなりたいわ。これからヨロシクな。」
芹那の、関西訛りの甘ったるい声が耳元にふわっと響いた。
—ちょっと、変わった子なのかしら。
芹那のことはさらりと流しながら、美咲は目の前にずらりと並ぶワインはそっちのけで、上質な男たちを虎視眈々と見定めていた。
▶Next:3月5日 日曜配信
敵か味方か?謎の女、芹那の正体が明らかになる!
※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。
【婚活は、ワインスクールで】の記事一覧
2017.06.04
Vol.16
婚活は、ワインスクールで 最終回:極上のワインのように女を満たした、男の一言
2017.06.03
Vol.15
いよいよ明日で最終話!「婚活は、ワインスクールで」全話総集編
2017.05.28
Vol.14
「彼まで、あの子を選ぶの?」割れたワイングラスのように砕け散った恋心
2017.05.21
Vol.13
密室で触れ合う彼の手と私の手。「時間よ止まれ」と思わずにはいられなかった瞬間
2017.05.14
Vol.12
ワインバー経営者との秘密の特訓。普段は穏やかな彼の強い言葉に、乱れる女心
2017.05.07
Vol.11
誕生日に連絡もなく、プレゼントを買い与えるだけの夫。破綻した結婚生活を隠していた女
2017.04.30
Vol.10
「どうして私だけ幸せになれないの?」親友の結婚を祝福できない女の、密かな胸の内
2017.04.23
Vol.9
「30代には無理でしょ?」ドレスコード・ピンクは若さの特権と無言で語る20代女子
2017.04.16
Vol.8
慶應幼稚舎vs東大卒の学歴争い。1人の女をめぐる、男同士の熾烈なマウンティングの実態
2017.04.09
Vol.7
夢見ごこちな食事会の締めは、会費の徴収。1人2万円の食事代を請求された女たちの悲劇
おすすめ記事
2018.11.03
黒塗りの扉
【最終回】黒塗りの扉:運転手の仕組んだ罠で、破滅へ向かう2人…そして全ての謎が明かされる
- PR
2024.04.25
GWは愛車で小旅行!彼女をドライブに誘った男が、密かにアップデートした“あるモノ”とは?
2021.11.11
籠のなかの妻
「私を監視するため…?」モラハラを受け続け、疲弊する妻が見つけた夫の秘密
2024.04.20
アオハルなんて甘すぎる
「チープな正義感は通用しない」28歳女が、友人のために経済界に顔が通じる大物を怒らせてしまい…
2017.09.23
日曜日の女
都内に生息する女たちの生態を見よ!「日曜日の女」全話総集編
2017.07.05
マウンティングの虚像
彼氏ナシと決めつけていた友達に、恋人発覚。そんな時の正しい対応は?
2016.11.04
港区女子の原点
港区女子の原点:彼氏のランクで引き上げられる、女の価値と港区カースト
2024.03.04
「そういうとこ」で振られる男
「そういうとこ」で振られる男:早大卒34歳編集者。歴代彼女に同じセリフで振られ…
2019.12.04
僕のカルマ
「彼女を見る目が変わった…」。秘書の女と一晩過ごした男の、胸の内とは
2023.05.26
甘いひとくち〜凛子のスイーツ探訪記〜
「あなたの浮気のせいで破局したのに…」元彼が臆さず送ってきた、とんでもないLINEとは?
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.04.23
今日、私たちはあの街で
3回目のデートで、終電を逃した28歳女。翌朝、男が激しく後悔したワケ
2024.04.23
Editor's Choice~fashion~
最大10連休のGWのお出かけに!カラフルなミニボストンバッグが、万能な理由とは?
2024.04.25
Editor's Choice~beauty & wellness~
すれ違ったときに香るぐらいが好印象!大人のニオイ対策には、上質なランドリーアイテムを取り入れて
2024.04.26
大人の週末ToDoリスト
GWは東京でヨーロッパ旅行気分! 『イタリア展 2024』や『フランス展 2024』などイベント3選
2024.04.28
Editor's Choice~gourmet~
最高に気持ちいい空間で、ラグジュアリーな外飲み体験!今から楽しめるビアガーデン6選
この記事へのコメント