チヤホヤされたい東京妻 Vol.5

耐え忍ぶ妻、遥か過去の如し。与えてもらうのが当然。いつまでもチヤホヤされたい妻たち

初めて自己嫌悪に陥る遥。自分の市場ニーズは確認できたが…




「やっぱり、男性も結婚して理想と現実のギャップに驚いてるのねぇ」

マキコが欠伸をしながら間の抜けた様子で語り出す。盛り下がった食事会は早めに解散し、喋り足りないマキコと亜希と近くのカフェに入った。

「もしくは、現実に耐え切れず外に癒しを求める。その間に、肝心の家庭はどんどん冷え込んでいくって感じ?」

亜希も続ける。遥は、今夜見聞きする言葉は全部自分の家庭のことなのではないか、と感じていちいち心が落ち着かない。

食事会での中野の言葉を反芻する。確かに遥は、男性からは愛され、何かをして貰って当たり前だと思って人生を過ごしてきた節があった。

今夜だって、満たされない心を何かに埋めて貰おうと食事会に来たようなものだ。遥は結婚して初めて、「自己嫌悪」という種類の感情に浸っていた。


「あれ、中野さんからだ」

あれだけ盛り下がった食事会だというのに、商社マンの中野は遥からちゃっかりとLINEのIDを聞き出していた。新婚でしかも妊娠中の妻がいる中野は、食事会の時からうるさいくらい遥に言い寄ってきていた。

「なになに、LINE来た?何だって?」

マキコも亜希も目をキラキラと輝かせている。女友達とこんな風にさざめき合う時間は、純粋に楽しい。夫の愚痴を言い合うよりも、新しい何かが始まる時ほど盛り上がる。

ー遥さん、今夜はありがとうございました。いや、本当にお綺麗で…今度、食事ご一緒しませんか?

満更でもない遥だが、この男とは二度と会うことはないと確信している。相手が求めているものが明確に分かりすぎるからだ。

中野の清潔感のあるスーツの着こなしや涼しげな顔立ちは好ましかったが、彼の欲望のはけ口になることや、不倫の恋に身を委ねることで自分の人生をリスクに晒す気はない。

ーこちらこそ、ありがとうございました。お食事、ぜひ。ただ今とっても忙しいので、時間ができたらお声掛けさせてくださいね。

遥はこう返信したが、勿論、中野のために時間ができることはなかった。

▶︎Next:1月12日(木)更新
食事会に疲れた遥に、ついに運命的な出会いが訪れる?

クリ2DY詳細はこちら >

東京カレンダー 月刊誌詳細はこちら >

【チヤホヤされたい東京妻】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo