みりんと俺 Vol.9

みりんと俺 最終回:「人は見た目が9割」の男を変えた、“みりん系女子”の魅力とは

「人は見た目が9割」のマサシが考える典子の魅力


「マサシさん、ここ教えてもらえます?」

最近、中途採用の子が入って来た。隣の席の俺は、彼女のほぼ世話役だ。頭がキレて飲みこみが早く、アメリカの大学を卒業しているらしく英語も抜群にうまい。

ただ、彼女は全然可愛くない。

まず、外見に全く気を使わない。眉毛はぼさぼさでほぼ化粧もしていないし、全体的に諦めている感じだ。

そして、本人もそれを自覚しているのか、「私女子力ないので」としきりに言ってくる。先手を打っているつもりなのだろうけれど、「本当にそうだよね」とも言えないし、ますます絡みづらい。

仕事なので勿論淡々と教えているけれど、そんな俺の思いが顔に出ていたのだろうか。彼女が席を立った後、後輩の宏平が憐みの目を向けながら話しかけてきた。

「マサシさん、ただでさえ忙しいのに大変っすね…。今週金曜の飲み会、確かモデルの子も来ますよ。写真見せてもらったけど、かなり期待大です!どうですか?」

「今週は仕事遅くなりそうだから、遠慮しとくよ。」

宏平の気持ちは有難かったが、典子と会う約束があった。

「最近、付き合い悪いですね?もしかして新しい彼女ですか?」

相変わらず遠慮なく聞いてくる後輩だ。「違うよ」と苦笑しながら、仕事に戻った。




最近の週末は、典子と過ごすことが多くなっている。「付き合おう」と口にはしていないので彼氏彼女の境界線は曖昧だが、一緒にいる時間を考えれば、お互い他に相手がいないのは明白だ。

最近転職してきたあの女を思い出しながら、改めて典子を見る。

顔の可愛さは、正直どちらも似たり寄ったりだ。ただ、典子は化粧や洋服にはすごく気を遣っていて、女性ならではのお洒落を楽しんでいる雰囲気がある。それに目が合うと、これ以上ないくらい目尻を下げてにっこり笑いかけてくれる。あの女のように、必要以上に自分を卑下したりもしない。

地味で冴えないと思っていた典子の株が、最近急激に上がっている。

「何かついてる?」

マジマジと見ていたら、笑いながら聞いてきた。典子は、台所で夕食の準備をしてくれている。

「ねぇ、このみりん、まだあったんだね。」

懐かしそうに目を細めて言った。

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