裕太はハンドルを横浜方面へ向けて切った
銀座から首都高速に上がり、裕太はハンドルを横浜方面へ向けて切った。車内は静かで、乗り心地も快適だ。
スピーカーから、サカナクションの『多分、風。』が流れる。萌香が自室でいつも聞いているのより、はるかにいい音だ。
「きれいな音ですね」
室内空間の心地よさに、萌香は「もう少し遠くへ行ってもいいかも」と思う。都会も似合ったけれど、遠出がしたくなるクルマだ。横浜港シンボルタワーに到着して、午後の陽射しに照らされた海を眺める。
「すごい、キラキラしている」
萌香がそう言うと、裕太は「そうだ、次は人工のキラキラを見に行こう!」と声を弾ませた。
「人工のキラキラ?」
クルマはふたたび都内へと向かう。ふたりは、六本木のさくら坂を駆け上がり、表参道を抜けた。
さくら坂では、イルミネーションの前でたくさんのカップルが写真を撮っていた。表参道は、イルミネーション見物のクルマで少し渋滞していたけれど、きれいな光の列を眺めていると、いつまでも飽きることはなかった。
「人工のキラキラって、このイルミネーションのことだったのね」と萌香が話しかけると、裕太はまた少し恥ずかしそうな笑顔を見せた。
「人工のキラキラを見に行こう!」と言った時の勢いのよさと、はにかみ王子と呼びたくなる笑顔のギャップがかわいい。
このクルマも、ちょっと裕太に似ている気がした。海や遠出が似合う力強さと、街に似合う品のよさ、そのギャップが魅力的だ。
――わたし、二面性のあるこのクルマを乗りこなす彼にすごく惹かれるかも…。
萌香はそんなことを考えながら、広尾の自宅へ送ってくれる裕太の横顔を見る。
父親の愛車の名前も覚えていないクルマ音痴の萌香であるけれど、このクルマの名前が『グランドチェロキー』だということは、しっかり心に刻んだ。
ジープ・ブランドが送り出す、プレミアムなSUV
『グランドチェロキー』
都市にもなじむスタイリッシュなデザインと、ジープが誇る本格的な四輪駆動システムを組み合わせた万能モデル。外観だけでなくインテリアも上質で、都会では高級車、山や海ではタフなSUVと、ふたつの顔を持っている。V6エンジンとV8エンジンの2種類が用意され、居住空間やラゲッジスペースにも余裕がある。