初めてのドライブデートで、アラサー美女は男性のこんなところを見ている。
大手ゼネコンの人事部勤務の萌香は、はたしてどのような評価を下すのか?
クリスマスパーティでふたりは出会った
萌香がはじめて裕太と言葉を交わしたのは、通っている六本木のジムのクリスマスパーティだった。
たまたま同じテーブルに座った裕太は、ビンゴゲームで2等の「北陸直送・カニ鍋セット」を引き当てた。
鍋セットを受け取って席に戻った裕太は、萌香に向かって「僕、じつは明日の朝から出張なんですよ…。よかったらいりませんか?」と、少しはにかみながら話しかけてきた。裕太はパッと見、31歳の自分と同じくらいの年齢に見えた。
「ご出張はどちらなんですか?」
「イタリアです。1日だけ休みが取れたので、レンタカーを借りてトスカーナの山奥にワインを買いに行くのがいまから楽しみなんです」
「あっ、スーパートスカーナ、おいしいですよね」
「そう、よかったら、お土産に買ってきますよ」
すぐにエアロビのイントラによる余興が始まって会場は賑やかになり、その日はLINEの交換をする以上の進展はなかった。
それから10日ほど経って、裕太からLINEが入った。
“萌香さん、こんにちは。ぴったりのワインが見つかりましたよ。近々、ランチでもいかがですか?”
萌香は、裕太の少しはにかんだ笑顔を思い出した。悪い人ではなさそうだ。年齢はいくつで、どんな仕事をしているのか、ちょっと気になる。
萌香は、少し時間を置いて、丁寧にスマートフォンに文字を打ち込んだ。
“ありがとうございます。土曜日は友人の結婚式があって…、でも日曜日なら大丈夫です!”
裕太がどんなクルマに乗っているのか気になっていた
クルマで迎えに来てくれるとは聞いていたけれど、どんな車種に乗っているのか、少し気になった。もっとも、そもそもクルマに疎いので、モデル名を聞いてもわからないのだけれど。
約束の11時ちょうどに、スマートフォンの画面に「外苑西通りに到着しました」というメッセージが映し出された。自宅で飼っている猫のべジータに「行って来ます」と告げて、エレベータで降りて外に出た。
広尾駅に近づくと、裕太が白いクルマの前で手を振っていた。クルマの先頭には「Jeep」のエンブレムが光っている。クルマに疎い萌香でもジープの名前くらいは知っている。だが、そのクルマは、萌香の知っているジープのイメージとはかけ離れていて、萌香の目にとても印象的に映った。
それは、広尾の街並みに馴染むスタイリッシュな雰囲気でありながら、同時に頼りがいのある印象も併せ持っていたからだ。クルマの列に埋没しない個性と存在感を放ちながら、派手にアピールし過ぎない知的な佇まいに好感を持った。
裕太に近づき、「お待たせしました」と告げると、裕太は笑顔で助手席のドアを開いてくれた。助手席に座ると、掛け心地のいいシートが萌香の体をやさしく包み込んでくれた。