2016.12.05
東京グラマラススカイ Vol.1いつの間にか、どこかに置き忘れた夢と欲望
「こんにちは!初めまして。」
『アビス』の席は華やかだった。しかし正直に言うと、食事会は好きではない。何故、好きでもない女に無駄に高いお酒を飲まれ、そして男性が全部支払わないといけないのだろうか?日本の、この“男性が奢って当たり前”文化が本当に嫌いだ。
「翔太さんは、どちらにお住まいなんですか?」
目の前に座る、スタイルが無駄に良さげなアキという女が話しかけてきた。大きな目に、少し狭いおでこ。一見、今風の顔立ちだがどこか和の要素もあり、嫌いな顔立ちではなかった。
「あぁ、六本木一丁目だよ。」
またお決まりの会話が始まるのか、と思うとうんざりする。大概、名前と年齢の後に続く質問は職業、そして住んでいる場所だ。
「え〜奇遇!!私たちの会社も、六本木一丁目なんですよ!」
「へぇーそうなんだ。アキちゃんは何やってるの?」
これも、聞くのがマナーだろう。(アキの顔があともうマイナス32点だったら、質問すらしなかったかもしれないが。)
「今はWeb広報してます。凄く忙しいですが、楽しくて。翔太さんは?」
だから食事会は好きじゃない。永遠に、同じ質疑応答が繰り返される。ただ相手が変わるだけで、質問や会話の内容はほぼ変わらない。
「コンサル、かな。」
もう、次に言われる言葉は分かっている。“すご〜い!”か“カッコイイですね”のどちらかだ。
「へぇーすご〜い!」
最近の日本女子は、可愛いと凄い以外の言葉を知らないのだろうか?凄いと言えば男子は喜び、可愛いと言えば女子は喜ぶと信じて疑っていない気がする。今日もいつもと変わらない出会いしかなさそうだ...そう思った時、アキが不意に質問をしてきた。
「翔太さんの、将来の夢って何ですか?」
—将来の夢!?—
目の前に座るアキは馬鹿なのだろうか。大人になって、将来の夢をスラスラと語れる人なんているのだろうか。その逆も言える。大学卒業後、将来の夢を聞く人に初めて出会った。
「将来の夢?そんなのあるわけないじゃん...俺もう31歳だし。」
「ないんですか?なりたいものや、好きな人、そして手に入れたい物。」
パッと頭に思い浮かんだのは“良い女と付き合うこと”くらいだった。そんなことしか思い浮かばない自分が急に恥ずかしくなり、それ以上アキを見れなかった。
◆
「将来の夢、かぁ...」
帰り際タクシーに乗って、家より少し手前の六本木交差点で降りた。いつも以上に人が多くて混み合っていた。生まれ育った東京。当たり前のように流れていく日々。でも本当に、今のままで良いのだろうか?
「手に入れたいものって、何なんだろう...」
今まで“無難”が一番良いと思っていた。でも、それじゃダメだともう一人の自分が叫んでいる。六本木交差点のスクリーンでは、誰かのミュージックビデオが大音量で流れていた。
次週12.12月曜日更新
アキとの出会いで目覚めた翔太。東京で、一度失った夢を見つけられるのだろうか?
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