ー社会からの目を気にして、自分の欲望を隠して生きる大人たちへー
子供の頃、思い描いていた夢は何だったのだろうか。
大人の階段を登るたびに見失う夢のカケラ。
代わりに手にいれるのは、周囲の視線を気にして何となく合わせる術。
最近の若者は欲がない、ってそんなことある訳ない!
今こそ、 もっと楽しく華やかに、人生を謳歌しようじゃないか。
一見、何不自由なく暮らしている。でも常に探している、“何か”。
「なぁ圭介、最近なにか楽しい事ないの?」
どんよりと曇った六本木の空を見つめながら、独り言のように呟いた。
「楽しい事ねぇ...最近何かあったっけ?ってかさ、翔太っていつもその言葉を俺に問いかけるよね。」
ミッドタウンのスターバックスはいつも混んでいる。大学のゼミ時代からの付き合いの圭介とは、かれこれもう10年来の友達だ。昔から、暇な週末は二人でこのスタバに集い、人の流れをただ見つめている。
「昔はさ、凄い経営者になって、パーっと遊んで、派手に暮らして、幸せになるって言ってたけど...何か最近、その気力さえないなぁ。」
「翔太は自分で会社やってるからいいじゃん。俺の方は相変わらず会社の駒のように働いているだけだし。いいよなぁ、翔太は。」
圭介は元々外資系の広告会社にいたが、現在は日系の大手広告会社で働いている。一方の自分は、コンサル系の会社を立ち上げて早5年。六本木一丁目にある、所謂“タワマン”ってやつに住み、ベンツのSLクラスに乗り、食うには困らない稼ぎもある。
一見、何不自由なく幸せに暮らしている。でも、いつも常に何かを探している。
答えのない、ぼんやりとした“何か”を。
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