東京イノセントワールド Vol.9

そこに愛はあるのか!?東京の悪女に振り回される哀れな男たち、日々失う純情さ

欲望が渦巻き、誰もが成功を願う街、東京。

この大都会に長く住めば住むほど、大切な何かを失っていく気がしないでもない。

東京の独特な空気に飲まれて心の純粋さを失い、幼い頃に描いていた夢を失い、そして本来の自分らしさも徐々に消え失せていく。

長野県から上京してきた美穂と慎吾。大都会に揉まれながら、東京に染まっていく二人は都会の片隅でイノセントさを失わずにいられるのだろうか?

東京出身のマリエに対してコンプレックスを感じていた美穂と、美穂の長野時代の元彼・慎吾。マリエに惑わされ続ける慎吾だが、後輩・理恵と一夜を過ごしてしまう。そして遂にマリエが牙を剥いた...


いつの日も思い出は綺麗だから


人は、悲しい出来事を自然と忘却できる生き物だと聞いたことがある。

あまりにも辛すぎる経験は、忘れるように脳に指令が行くらしい。

だから、思い出はいつも輝いているのだろうか...高校時代、長野のあぜ道を二人で笑いながら駆け抜けた日々は、いつ振り返ってもキラキラと輝いていた。



—慎吾、話があるの。マリエと何かあった?—

久しぶりに慎吾にLINEを送った気がする。急に連絡が途絶えてから、自分から送ることは避けていた。既読無視に耐えられるほど、心は強くない。

—美穂、ごめん連絡取れなくて。ちょっと色々あって...—

前まで、マリエに対して嫉妬心しかなかった。東京で生まれ育ち、何不自由なく暮らしている。仮に職を失い、収入がなくても“実家”という住める場所が都内にあるし、支援してくれる人もいるだろう。

独りっきりで、東京で頑張っているこっち(上京組)からすると、それが羨ましくて仕方なく、そして悔しかった。帰る家は自分で頑張らない限り、東京にはない。

でも、今は少しずつ違う感情が芽生え始めた。上京してきたからこそ分かる、様々な思い。同郷の仲間がいることのありがたみと独特の結びつき。私と慎吾のような、この固い絆はマリエには一生分からないだろう。


だから、何としてでも慎吾を救いたかった。

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