軽井沢の冬 Vol.5

軽井沢の冬:夫婦にもお互い別の顔がある?穏やかな日常に忍び寄る、非日常の誘惑。

仕事でも恋愛でも、常に勝ち負けを意識し戦闘態勢を崩せない東京人たち。

人生の冬を迎え、心が渇いてしまったら、東京から1時間のオアシス・軽井沢で己を見つめ直すと良いかもしれない。

軽井沢で、東京人たちを出迎えもてなしてくれる女性がいる。美希、35歳。

これまで、結婚を迷う後輩・加奈、「決められない病」の男・正輝、化粧品プロデュースを目指すが美希の元を訪れて心の平穏を取り戻した。

しかし美希自身にも気がかりなことがあるという。

穏やかな日常こそが、幸せ?


11月、軽井沢は黄金色に輝く。

色づいた木の葉が舞う南ヶ丘別荘地を抜け、美希は白いメルセデスを軽井沢駅へと走らせた。今日は月に1度、表参道の美容室に行く日。

軽井沢は美しい町だ。

「美しい景色を見ながら暮らせば美しい人生になる」そう思って、美希は3年前に東京から地元・軽井沢に戻った。自然美は一切の負の感情をかき消してくれる。

誠司は昨夜また帰ってこなかった。

昨日で今月4度目。誠司は「来春オープン予定のホテル開業準備が佳境で」と言ったが、あの日以来、小さな「?」が積もり積もって美希の心に灰色の影を落としている。

1つ1つは些細なことだ。例えば、急に花を買って帰ってくる。美希の週末の予定を妙に何度も確認する。あと、美希との会話の相槌が空っぽな気がする、とか。

何か変、という違和感。しかしこういう女の勘はたいてい当たるのだ。

「ホットティーラテを1つ。」

旧軽井沢の『SAWAMURA』で定番をテイクアウト。美希は昔から、気に入ると同じものをずっと選ぶ。日常に刺激は要らない。そう、私は心穏やかに過ごしたいだけなのだ。

風に揺れる赤いもみじはスローモーションのよう。ゆっくりとした時が流れる、軽井沢での平和な日常を美希はとても大切にしている。

誠司は今日も仕事があって(土曜なのに)、夜の新幹線で軽井沢に戻ると言っていた。

―日本橋のマンションに寄ってみよう。

美希は東京に向かうべく駅へと急いだ。もちろん、誠司には秘密。

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