毎月増えていくルブタン、高額の保険料。夫・小遣い制の恐怖
「毎月、ルブタンが靴箱に増えていくんだぜ?どこに履いて行くんだか...。」
「俺の小遣いより、月々の保険料の方が高いのって、おかしくないか?」
松田の小遣いは月10万円だそうだが、ルブタンは1足約10万円。そして、意味不明な保険料。どう考えても、計算式が合わぬ。
自分に高額の生命保険をかけられ、シューズクローゼットに真っ赤なソールのハイヒールがズラリと並ぶのを想像するだけで、吾郎は吐き気を催し、背筋が凍った。
一方で、松田の嫁が恐怖政治のように家庭を支配し、それで満足を得ているかと言うと、そんなことはない。悪政の代償として、当然ではあるが、松田は嫁を女として見られなくなった。簡単に言えば、欲情しなくなった。
女として、それは不自由な松田と同様、辛い生活なのだろう。
そうして嫁は、またしても松田を責め、浮気を疑い、束縛には果てがない。悪循環は、永遠に続いていくのだ。救済方法は、ない。
「結婚=ゴール」を信じている人間は、夫婦不仲も受け入れる
「アイツがうるさいから、俺、先に帰るわ。お前は、この後どうすんの?」
グラスビール1杯、15分弱。それが松田の自由時間の限界値らしい。
「別に、考えてないよ。本でも読むかな。」
「お前も、変わった奴だよな。早く結婚した方がいいぞ。」
吾郎は、松田の言葉に呆れる。これほど結婚生活を嘆きながらも、彼は半ば無意識に結婚を「正」だと信じ、独身を煽る。
苦労して稼いだ金は、ポンコツ嫁の用途不明なルブタンと化し、高額な保険料の支払いに充てられ、10分の1も手元に残らない。
妻には欲情できず、他の綺麗な女に目を向けることも許されず、自由時間すら奪われてもなお、松田は、結婚が一種のゴールだと認識して疑わないのだ。彼は、結婚生活の悪循環を、「常識の一部」として受け入れている。
一体この男は、何を楽しみに人生を送っているのだろう。
しかし、人は基本的に自由を求めるが、自由がなければないで、それは「楽」な生き方なのかもしれない。
と、無理矢理にでも結論付けてやりたい思うほど、吾郎は松田が惨めに思えた。しかし所詮、他人事だ。異を唱えたところで、彼の「常識」は覆らないし、ましてや松田を不機嫌にするリスクなんぞ、取りたくはない。
「そうだな。」
吾郎は適当に相槌を打ち、松田と別れた。
結婚という、恐ろしい固定観念。そんなものには、絶対に流されたくない。吾郎は、改めてそう思った。
次週11月6日日曜更新
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