2016.09.21
SPECIAL TALK Vol.24ビームスのアルバイトで接客のイロハを学ぶ
金丸:高校卒業後は、中央大学経済学部に進学されますが、やはり東京に行きたいという思いがあったのですか?
野口:確かにありましたけど、中央大学は東京の郊外にあったので、1、2年のときはほとんど八王子暮らしでした。3年生になると授業も少なくなり、時間に余裕もできたので、表参道の明治通り沿いにある『ビームス 原宿』でアルバイトを始めました。
金丸:そうなんですね。この対談では、ビームスの設楽社長にもお越しいただいたんですよ。
野口:読ませていただきました。当時の思い出が蘇りました。
金丸:やはりビームスでのアルバイト経験が、今の仕事につながっているのでしょうか?
野口:かなり影響を受けています。本当にいい会社でした。
金丸:商品を売るというより、「アメリカン・スタイルを売る」みたいな楽しさがありますよね。ビジネス、ビジネスしていなくて。
野口:何より遊び心があります。今もそのエッセンスが保たれているので、ビームスを訪れると嬉しくなります。
金丸:当時のバイト仲間とは、今でも会っているのですか?
野口:年に2回は会っています。青春時代、同じ屋根の下で働いていたというのは、やはり大きいです。
金丸:若い頃の仲間というのは、肩書きもなければお金もない。苦労を共にしていますからね。
野口:会うと、すぐその頃に戻ることができます。日々切磋琢磨して働いて、仕事のあと、みんなでどこに遊びにいくかばかり考えていましたから。
金丸:当時の日本は、消費が上向きでしたし、みんな同じものを欲しがる時代でした。
野口:本当に一極集中していましたね。「これが売れる!」というと、みんながこぞって買っていました。私が学生時代に一番流行ったのは、ライラックのポロシャツ。みんな薄紫色を着ていました。その頃に比べると、今の若い人たちの嗜好は分散していますね。それだけ自分を持っているんだと思います。
営業経験を積んだ社会人時代。そしてファッションの世界へ
金丸:ビームスで輝くような青春時代を送り、就職を迎えるわけですが、そのままファッション関係に進むことは考えなかったのですか?
野口:正直、就職については、あまり考えていませんでした。特にここに行きたいという希望もなくて。それで父に薦められて、シヤチハタ東京商事株式会社に入社しました。
金丸:意外ですね。ビームス時代とは、大きく環境が違います。
野口:シヤチハタでは3年間営業を経験したのですが、毎日文房具店をいくつも回って、自社の商品をいかにアイライン(目線の高さ)上に置くかということを必死にしていましたね。仕事も人にも恵まれていたのですが、やはり次第に洋服への想いが蘇ってきまして。どうせ売るなら自分の好きなものを売りたい、という想いが強くなり、転職を考えるようになりました。そこで見つけたのが、エービーシー・マートの前身である株式会社インターナショナル・トレーディング・コーポレーションです。今の『ABC-MART』と違って、当時は洋服の輸入卸業がメインで、靴より洋服の方が大きな売り上げを占めていました。
金丸:今の店舗しか知らない人からすると、想像もつかないでしょうね。
野口:確かにそうですね。
金丸:そうして、いよいよ洋服の世界に入っていくわけですが、野口社長が転職されたのは、いつですか?
野口:1991年です。ちょうど小売業を始めた頃で、まだ3店舗しかなかったんですが、そのうち上野の1号店に販売として配属されました。
金丸:そもそも卸業をメインとしていた会社が、どうして小売りを行うようになったのですか?
野口:これは聞いた話なのですが、革ジャンを大量に生産したものの、ブームが過ぎ去り、大量に売れ残ってしまったそうなんです。それで最後の手段として、上野にある取引先のビルの軒先を借りて、社員総出で手売りしたところ、瞬く間に完売してしまった。これはスゴい、自分たちのお店が欲しいという話になり、上野に店を構えたと聞いています。
金丸:在庫を一斉に処分できたなんて、すごいエピソードですね。それに、上野がなぜ1号店なのかもわかりました。野口社長は大学時代に販売経験がありますし、接客には慣れていらしたのではないですか?
野口:おかげさまで、ビームスでの経験が十分に生きました。お客様に背を向けないように常に向きを変えるとか、接客の基本は叩き込まれていたので、先輩方にも「動きがプロのようだ」と驚かれました。その噂を聞きつけて、当時の三木社長にも見に来ていただきました。
金丸:そうして三木社長は、野口さんの存在を知るわけですね。
野口:そうですね。それですぐ本社に配属されまして。靴を扱う部署で、後の看板ブランドになる「ホーキンス」の担当になりました。
金丸:いきなりの抜てきですね。それにしても、好きを仕事にしようと思った瞬間に、過去の経験とつながっていくのが、非常に面白い。野心や野望もなく、ただガムシャラに仕事をしていたら、それを周りの人が評価してくれて、新たな道に導いてくれる。成功者には必ず、そういったシーンが登場するように思います。
野口:目の前のことに没頭していたら、急に道が開けたような感覚でした。何が評価されるかというのは、本当にわからないものです。
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