SPECIAL TALK Vol.24

~売れる理由はデータに現れる。売れない理由は現場でしかわからない~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。産業競争力会議議員、規制改革会議委員、内閣官房IT本部本部員、経済同友会副代表幹事、NIRA代表理事を務める。

営業利益率を高水準に保つことができる理由とは?

金丸:社長に就任されてから10年近く経ちますが、今も業績は好調で、小売りにもかかわらず、営業利益率は20%に近い。業界では〝高収益小売り〞と言われています。

野口:おかげさまで、店舗数も順調に伸びており、国内では873店舗、海外では韓国、台湾、米国で220店舗(2016年5月現在)を展開しています。それに高い営業利益率を保つことができるのは、やはり製造小売業だからこそだと思っています。

金丸:高い営業利益率の秘訣はなんですか?

野口:みなさん意外に思われるのですが、「ホーキンス」や「VANS」「NUOVO」などは自社開発商品で、いわゆるプライベートブランドなんです。これらが売上げの半分を占めていますし、その他の「ナイキ」や「アディダス」なども、すべてメーカーと直取引をしていて、一緒に商品開発も行っています。『ABC-MART』限定の商品を増やすことで、いつ訪ねても欲しくなる商品があるようにし、お客様の購買意欲を刺激するような店づくりを常に考えていますね。

金丸:顧客の声を吸い上げ、それを早いスピードで商品に反映させていく。このサイクルを徹底しているのですね。

野口:それに靴というのは、やはり参入が難しい商売なんですよ。工場が必要だし、靴の種類もサイズもたくさんあって、洋服に比べると、非常に効率が悪い。だから、ライバルが少ないというのも要因のひとつかもしれません。

金丸:商品開発にあたって、何か工夫されていることはありますか?

野口:そうですね。時代の流れが早くなっているので、昔に比べて、大ヒット商品を生み出すのが、本当に難しい。私がビームスで働いていた頃のような、みんなが同じアイテムを買いに走るということはなくなりました。今は、小ヒットをどれだけ打てるのか、という感覚で商品開発をしています。

金丸:ホームランバッターというより、イチローのようにヒットを積み重ねていく、ということですね。

野口:そうですね。やはり小売りは足し算で、売上げを積み重ねていくしかありませんから。でも小ヒットは、回数が多いので楽しいですよ。ホームランばかり狙ってると、なかなかうまくいきませんけど。

金丸:ところで、今後はどのような展開を考えていらっしゃるのですか? 非常に気になります。

野口:スポーツ寄りの業態に力を入れていきたいですね。実は、今年4月に『ACE SHOES STUDIO』という店を出店しました。おしゃれに運動を楽しみたい方をターゲットに、靴をはじめランニングやフィットネス、ヨガなどのスポーツアパレルを取り揃えていて、東京、大阪、福岡で4店舗を展開しています。今は普段のファッションに、スポーティーなアイテムを取り入れるスポーツミックススタイルも流行っていますし、今後は靴だけじゃなく、そういったアパレルも重要になってくるはずです。積極的に新業態の店をつくっていきたいですね。

金丸:性別や国籍を問わず、健康志向は揺るぎないですからね。

野口:あと力を入れていきたいのは、ECです。ここは本当に負けられません。特に店頭で行うECを強化したいですね。「iPad」を店頭に置き、店で取り扱いのない商品も販売していきたいと思います。

金丸:店舗という強固なチャンネルがあるからこそ、様々なチャレンジができるのですね。

野口:そうですね。今後もミクロとマクロの双方の視点を持ち、お客様が求めるものを的確にマーケットに投入していきたいと思っています。それが企業の成長に繋がるのだと確信しています。

金丸:本日は野口社長の経営手腕の秘訣と『ABC-MART』の成長を知ることができ、また今後のビジョンもしっかり聞かせていただきました。貴重なお話をどうもありがとうございました。

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