アラフォー・ファンタジー Vol.1

アラフォー・ファンタジー:オトナの男は40代で花開く!?その魅力は真実なのか幻想か

年上男性への尊敬の念が、いつしか恋愛感情に…?


美紀はテレビ局への就職は叶わず、第二志望で受けていた出版社へ内定をもらい、働いていた。しかし、彼女の想いは複雑だった。元々報道記者志望だったのに、配属されたのは女性ファッション誌。

「やりたかったことと違う」と悩む彼女が連絡をしたのは、1年以上前に一度会っただけの健一だった。彼の仕事への熱意と話の面白さに惹かれ、非常に印象に残っていた。美紀にとっては天上人のような存在だったのだ。

彼と行った先は『ラ ボンバンス』だった。社会人になって初めて異性と行った高級レストラン。久しぶりに会う彼のエネルギッシュさも健在で、すぐにその魅力に引き込まれた。

帰りのタクシーの中で、健一に手をつながれ2人の付き合いはスタートした。

その日以来、彼は豊かな財力と経験値で美紀を魅了し続けた。

バツイチ子なし。持ち家も慰謝料もなかった彼は、独身貴族を存分に謳歌していた。松濤にあるという実家もかなり裕福だった。

『カンテサンス』『ガストロノミー ジョエル・ロブション』『ロオジエ』など名だたるレストランを覚えたのもこの時期だ。記念日やクリスマスなどのイベントごとにもまめで、「グランドハイアット東京」や「ザ・ペニンシュラ東京」などことあるごとに泊まっていた。

また、忘れられないのが2人で行ったパリ旅行だ。エルメス、ルイ・ヴィトン、ヴァンクリーフ&アーペルなど、数々のブランドショップを梯子し、ショッピングで使った金額は覚えているだけでも100万円近い。

アラフォー男の喜び「若い恋人が試着室から出てくる瞬間」


健一は美紀に買い物させるのが大好きだった。好きな人が喜ぶ姿を見たいというのはもちろんのこと、試着室から出てくる彼女の姿を見るのが何より好きだとよく言っていた。


今思えば、子供がいなかった彼の父性本能だったのだろう。20代前半の垢ぬけない、しかし若く美しい素材を自分の手で染めていく。これが40代になった健一が覚えた、何よりも楽しい遊びのようだった。

パリで、銀座で、六本木で、表参道で。彼は「姫(美紀)のファッションショーが見たい」と毎週のように買い物に連れて行きたがった。

しかし、順調に見えた2人の付き合いも終わりを迎えた。

高級フレンチもブランド物の鞄も板についてきた、「姫」と呼ばれるには恥ずかしさも覚えていた28歳の頃。きっかけは年末に宿泊した箱根の温泉宿だった。

2人の付き合いはこのとき5年目を迎えていた。最後の1、2年は、体の関係もほとんどなく老夫婦のような付き合いだった。

その旅行で久しぶりに見た彼の体は、43歳で出会ったあの頃と比べて明らかにしわが増え老いていた。

30歳を前に、「若さ」を手放しつつあった彼女は、彼の老い始めた体を見て衝撃が走ったという。世の中には「枯れ専」といってシワシワの体に萌えるという女性もいると聞いたことがあるが、美紀はそこまで振り切れなかった。

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