2016.07.21
SPECIAL TALK Vol.22マーケティングと働き方に革命を資生堂の行く末とは
金丸:資生堂の社長にはどのような経緯でなられたのですか?
魚谷:日本コカ・コーラの会長を退任してから、様々な企業のマーケティングに顧問として携わるようになりました。そんな中、資生堂から「マーケティング改革を手伝ってほしい」と依頼がありまして。長年外資系企業に身を置いていたので、歴史ある資生堂に何とか頑張ってほしいという思いがあり、「私の力で日本の会社を強くできるなら」と引き受けました。でも、社長になるとは思ってもいませんでしたよ。打診されたときは、本当に驚きました。
金丸:資生堂ではどのような改革に取り組まれているのですか?
魚谷:大きく3つあります。1つ目は国内事業の立て直し。横ばいの売上げを飛躍的に伸ばすため、マーケティングを強化してブランド力の向上を図っています。2つ目は、働き方の改革です。
金丸:早くから育児休業や短時間勤務制度を導入し、「女性に優しい企業」の代表格だった資生堂が、昨年、育児期間中でも夜間までの遅番や土日勤務を奨励する方針に変えたというニュースは、非常に話題になりました。「資生堂ショック」と言われるくらいに。
魚谷:私たちもショックでしたよ。ニュースで取り上げられた後、世間の皆さまから様々なご意見をいただきました。でも少し時間が経つと、「女性の活用に取り組んできた企業だからこそ、育児中の優遇に対する一歩進んだ課題が出てきた」と改革の本質を理解してくれる人が増えてきました。日本企業にとっても大きな示唆になり、結果的には良かったと思います。
金丸:私は今、厚労省の会議「働き方の未来2035」のリーダーをしておりますが、資生堂の改革には拍手を送りたいです。ワークライフバランスを整えて生産性を上げていくのは大事なことですが、その最適バランスは、地域によっても会社のステージによっても違うことを広く周知してくれました。
魚谷:「子どもがいるから早く帰りなさい」と言うことだけが、優しさではないんです。ビューティーコンサルタントのなかには「忙しく働く同僚を残して帰るのが辛かった。改革のおかげで、きちんと職場に貢献できるのがうれしい」と泣いて話してくれる方もいます。育児中の社員や、その社員を支えるまわりの人の負担は増えたと思いますが、面白いもので「自分が土日勤務になったら、ゴルフばっかりだった夫が子どもの面倒を見てくれるようになって、子煩悩になりました」といううれしい報告もあります。思わぬ副産物を生んでいるんです。
金丸:成果を上げないと賃金も上がらないし、優しいだけじゃ、真のワークライフバランスの実現は難しいですよね。
魚谷:私は女性管理職の目標値に関係なく、男性にも女性にも平等に機会を与えようと思っています。そのチャンスをものにするには、男性だけでなく女性も専門知識や人間力を養わなければなりません。
金丸:それが本当の意味での平等だと思います。
グローバルな視野を持ち、会社に縛られない働き方を
魚谷:3つ目はグローバル化です。資生堂グループの商品は120ヵ国で販売され、売上高の53%を海外が占めています。今後もM&Aなどで積極的に海外拠点を増やして、社員が思い切り世界で戦える環境を整えていきたいですね。グローバル化が進めば、日本国内でも外国の方と一緒に働く機会が増え、上司や部下が外国人になることも増えるでしょう。たとえばコカ・コーラ社のCEOは、私がいた頃には5人変わったのですが、最初はキューバ人、次はアメリカ人、続いてオーストラリア人、ザンビアで育ったアイルランド人、トルコ人と、アメリカ企業なのにアメリカ人は1人しかいませんでした。
金丸:真のグローバル企業ですね。
魚谷:日本企業はこれまで海外拠点をコントロールするために、日本人を現地に派遣してきましたが、マネジメントは日本人じゃないといけないという考え方は、前時代的です。国籍に関係なく、最適な人を最適な場所に配置することが重要だし、ダイバーシティを進めて、資生堂も本当の意味でのグローバル企業になれるよう、挑戦していきたいですね。
金丸:求めているのは、どういった人材ですか?
魚谷:もはや「就社」の時代ではないので、自分がキャリアとして何を極めていきたいかを考えられる人です。その自己実現できる舞台が資生堂なら一番うれしいですが、そうじゃない場合もあります。とにかく会社に縛られてはいけないと思います。
金丸:魚谷さんのビジネスマン人生をお聞きし、マーケティングの極意やグローバル化はもちろん、出会いやリスクへ立ち向かう大切さを学ぶことができました。貴重なお話をありがとうございました。
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