恋愛低体温女子 written by 内埜さくら Vol.8

恋愛低体温女子・最終回:腹黒女のさらなる攻撃に撃沈!? 恋と仕事を両立させるために進んだ道とは……

前回までのあらすじ

「コミュニケーション能力に長けた恋愛上手のほうが恋愛下手より仕事ができる可能性が高い」

この説を全否定する神崎真理子(29)は自身が憧れだったブランド『M classe』で働く新人プレス。そして彼女は自ら積極的に人を好きになった経験に乏しい、自他共に認める“恋愛低体温女子”でもあった。

だが、ひょんなことから同じ会社でパタンナーをしている一ノ瀬大知(29)へ好意を持つようになると同時に、上司である二階堂隼人(35)から告白される。

しかし、一ノ瀬と交際を望む肉食女子の竹下みちる(27)が予想外の腹黒さを出して一ノ瀬と真理子の関係を妨害しようとする。同僚で友達の長倉怜奈(29)がアシストしてくれてはいるが、果たして一ノ瀬と真理子、二階堂と真理子の恋の結末は……!

前回vol.6:最後に勝つのは恋愛下手?“恋愛”はどこまで女を変えるのか

二階堂と真理子の話を盗み聞きしたその足で、みちるは一ノ瀬の元へと向かった。もちろん、告げ口するためである。

――二階堂さんとマリコさんがカップルになっちゃえばいいのよ。そうしたら、一ノ瀬さんが寂しい隙を狙ってわたしが入り込めばいいんだから。

急ぎ足で会社に戻ろうとすると、ちょうど自社ビルの玄関前に一ノ瀬がいるではないか。ランチ帰りなのだろう。みちるはさらに足を早めて追いついた。

「一ノ瀬さん」

ポンと背中を叩くと、振り向いた一ノ瀬が自分を怪訝そうな表情で見ている。みちるは「どうしてそんな目で見るの?」と瞬時とまどった。関係が深まったようにマリコにLINEをした愚策が、一ノ瀬と真理子にばれている事実に気づいていない。

「ああ、竹下さんか……何か用ですか?」

声も以前より冷たさを帯びているような気がするが、みちるは挫けない。会社に戻る前に作戦は立ててあるからだ。

「あのですね、わたしいま大変なふたりを目撃しちゃったんですぅ」

「そう。でも僕、噂話には興味がないんで」

自分を置き去りにして歩き出す一ノ瀬の背中に向かってみちるは少し声を高めた。

「でも、わたしが見たふたりのうちひとりはマリコさんですよ」

一ノ瀬の肩がぴくりと震える。作戦どおりだ。みちるは一ノ瀬の前に回り込んで話し始める。

「さっき、マリコさんと上司の二階堂さんが仲良さそうに腕を組んで歩いてたんです。それだけじゃなくてキスまでしたからわたし、驚いちゃってぇ」

ひと息に言い終えると一ノ瀬が「えっ……」と愕然とした表情をしている。これも作戦どおりだけど、これで完了じゃないとみちるはほくそ笑む。

「あのふたり、つき合ってたんですね。わたし全く気づきませんでした。じゃあ、急いでるんでお先に」

立ち止まった一ノ瀬に背中を向け、みちるは歩き出した。

――まだやることが残ってるんだから。

みちるが残しているやるべきこととは、自分がでっち上げた噂話を社内に広めることであった。噂話と悪口が大好物の人間を何人か思い浮かべ、実際にみちるは「本当に驚いちゃってぇ」と前置きして全員に触れ回った。

会社員経験者なら解るだろうが、噂話が広まるのは早い。結果、翌日には「二階堂と神崎はつき合っている」というデマが知れ渡っていた。

【恋愛低体温女子 written by 内埜さくら】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ