恋愛低体温女子 written by 内埜さくら Vol.2

恋愛低体温女子:社内恋愛否定派なのに、まさかの社内男性からアプローチ!?


二階堂が言った“藤原さん”とは、『M classe』のトップデザイナーである。確か年齢は40歳をすぎているが、さすがデザイナーだけあり独特のオーラをまとっていて、年齢不詳に見える。

「あら神崎さん、いらっしゃい。今日いらしたってことは二階堂さんに新作の進み具合を探るように言われてきたのかしら」

こちらが言う前に機転を利かせる察しのよさを真理子は尊敬していた。優美に微笑んだときにできる目尻の浅い皺も、無理な若作りはしないと主張しているようで生き方が憧れでもある。その藤原が、

「そういえばわたしの右腕をまだ紹介してなかったわね。一ノ瀬君、ちょっとこっちに来て」

と手招きした先にいる男性を見て、真理子は心の中で「げっ!」と唸った。

先ほど給湯室で失態を見せてしまった男性がこちらに近づいてきたからである。

「こちら、一ノ瀬大知君。毎回わたしのイメージを忠実に形にしてくれるパタンナーさん。確かいま29歳だったかしら?」

こわごわ一ノ瀬に視線を当てると、先ほどのことなど素知らぬ顔つきで藤原の問いに頷いている。

――そりゃ、そうだよね。仕事中にあんな話持ち出しても……。

真理子が安堵したのも束の間、藤原が意外な提案をした。

「今夜デザイナーチームで懇親会があるのよ。神崎さんもいかが?」

部署が違えど仕事歴で先輩に当たる藤原からの誘いは断れない。だが一ノ瀬と席が近いのは気まずい。それにプレスが自分ひとりで参加というのも不安だ。

「もうひとり、プレスを連れて行っていいですか?」
怜奈の顔を思い浮かべつつ、真理子は藤原の誘いに応じた。

懇親会では怜奈と一緒にいればいい。そして一ノ瀬からはなるべく離れた席に座ればいい――とプランを立てていたのに、これって運命のいたずらですか?怜奈は「社内だってどこで縁がつながるか解らないじゃない」と“獲物”を狙いに行ってしまうし、撮影が押して神宮前の『エビイロ』に遅れて到着すると、席が一ノ瀬の隣しか空いていないなんて。

「先ほどはどうも」

話しかけてきた一ノ瀬が給湯室で会ったときのようにクスッと笑ったような気がする。

「いやあ、すごかったですよ。あのシャドウボクシ……」

「ちょっと!その話をいまここでしないでください」

慌てて小声で制すると一ノ瀬が「じゃあLINEの連絡先、交換しませんか?」とスマホを取り出す。

「このタイミングで交換ってそれ、強制ですかっ」

断ろうとしたが、「無理に、とは言ってませんよ」と一ノ瀬が笑いながら言うため、この場を収めるため真理子は仕方なくスマホを取り出した。

怜奈は社内、社外問わずいい男がいればモノにする“社内恋愛肯定派”の恋愛上手だ。真理子は瞬時、上司の二階堂に心が傾きかけたが今日間違いだと悟った。そしてやはり、社内恋愛は否定派だといまこのときに自覚した。

社内恋愛のデメリット2
周囲に発覚した場合、恋愛にかまけて仕事を疎かにしていると勘違いされる恐れがある

この1点だけでもプレスとしてリスクが高い恋だからである。

さらにある男性の影が、「もし一ノ瀬から誘われても断ろう」という思いを強くさせていたのだった。

【これまでの恋愛低体温女子】
vol.1:あなたも当てはまる?自他共に認める“恋愛低体温女子”が、ある男性にドキッとしてしまった理由

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