恋愛低体温女子 written by 内埜さくら Vol.4

先手を取れる者が恋愛市場の勝者なのか。肉食女子VS草食女子のお食事会バトル勃発!?

前回までのあらすじ

「コミュニケーション能力に長けた恋愛上手のほうが恋愛下手より仕事ができる可能性が高い」

この説を全否定する神崎真理子(29)は自身が憧れだったブランド『M classe』で働く新人プレス。そして彼女は自ら積極的に人を好きになった経験に乏しい、自他共に認める“恋愛低体温女子”でもある。

現在は同じ会社のパタンナー、一ノ瀬大知(29)にアプローチされているがイマイチ気乗りしない。同僚の肉食系女子・長倉怜奈(29)に恋愛に臆病になった原因を打ち明けると、怜奈に「オファーがあるうちが華」と食事会に誘われる。

男性と無縁ではない生活の中、休日に油断してノーメイクでスーパーへ行くと……!?

前回vol.3:当てはまる人は意外に多い?恋愛に対して臆病になってしまった原因

「人違いだったらすみません。……もしかして神崎さんじゃないですか?」

帽子で顔を隠すタイミングが遅かったようで、真理子の願いは叶わず男が近づいてきた。

――でも、向こうも半信半疑みたいだから「違います」って言って走って逃げちゃえばバレないかも?と策を練ったのも遅かったようで、男が顔を覗き込み「やっぱり神崎さんだ」とうれしそうに笑う。

――見られちゃったからには仕方がない。腹を決めよう……。

真理子も笑顔で挨拶を返す。

「偶然ですね、一ノ瀬さん」

「まさかこんなところで会えるなんてびっくりしましたよ。土日は僕、ほとんど引きこもって趣味の料理でストレス発散してるんです。休日に休息を取らなくちゃ、いつ休めばいいのか解りませんからね」

休日にしっかりと休息を取りたいって……。「え!それ、わたしも同じです」

まさか一ノ瀬が自分と一緒の考え方をしているとは知らず、ノーメイクであることも忘れ真理子は答えた。すると一ノ瀬は「でも、そうだなあ」と斜め上を向いて何かを考えている様子。

「神崎さん、今日は誰か家で待っている人のためにスーパーへ?」と聞くので首を横に振ると一ノ瀬が白い歯を見せて微笑みかけた。

「じゃあ、今日は自炊も休んで一緒に夕食を食べませんか?Tシャツとデニムで行けるようなラフな店で」

自炊すら億劫に感じていたため真理子は快諾し、「嫌いなものはないですか?」と事前に聞いてくれる一ノ瀬の気遣いに礼を言い、その場は別れた。

渋谷マークシティ前で待ち合わせ、というのも真理子は好感を持った。スーパーで偶然会っているんだから、家が近いことは把握しているはず。それなのに自宅を知ろうとしないのは節度があっていい。

一ノ瀬が案内してくれた道玄坂にある『うなぎ・焼鳥 渋谷森本』はザ・焼き鳥屋という内装で、早い時間にもかかわらず店内は客で賑わっていた。


カウンターがメインの店というのも、真理子にはポイントが高かった。先ほどと違い薄くメイクをしているから、対面の席だとメイク前後がはっきりと見透かされてしまうようで恥ずかしい。

ハイボールで乾杯し、焼き鳥を頬張ると、真理子はあらためて礼を言った。

「今日は誘ってくれて、ありがとうございます」

「一度、神崎さんとふたりで食事したいなと思ってたんですよ。だからさっきは偶然だけど、会えて本当にうれしかった」

「え……」一度誘いたかった?なぜ?

「前に給湯室で神崎さん、シャドーボクシングしてたでしょう?」

「えーっと、あれは」見られたことを思い出すだけで頬が赤くなる。

「たぶん仕事のストレスを解消してたんですよね?でも普通、女の人って悪口で発散するじゃないですか。神崎さんは悪口を言わないからこそ、ああやって自分をなだめてたのかなと想像したら、素敵な人だなと思ったんです。見た瞬間は笑っちゃいましたけど」

――あの行動を見ただけでそんなことまで理解してくれたんだ。

確かに悪口を言うと、心がどす黒く曇る気がするからこそ、動いて発散していた。“言霊”を信じるなら、悪口を言えば言うほど、巡り巡って自分に戻ってくる気もするから怖い。でも……。

「一ノ瀬さんには給湯室といい、さっきのノーメイクといい、見られたくないところばかり見られちゃう」

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