恋愛低体温女子 written by 内埜さくら Vol.3

当てはまる人は意外に多い?恋愛に対して臆病になってしまった原因

前回までのあらすじ

「コミュニケーション能力に長けた恋愛上手のほうが恋愛下手より仕事ができる可能性が高い」

この説を全否定する神崎真理子(29)は自身が憧れだったブランド『M classe』で働く新人プレス。そして彼女は自ら積極的に人を好きになった経験に乏しい、自他共認める“恋愛低体温女子”でもある。

同僚の肉食系女子・長倉怜奈(29)に、上司の二階堂隼人を好きになったかもと相談するが、あっさり「気のせい」と否定。その後、『M classe』のトップデザイナー藤原主催の懇親会で、パタンナーである一ノ瀬大知(29)にアプローチされるが……?

前回vol.2:社内恋愛否定派なのに、まさかの社内男性からアプローチ!?

真理子はデートに誘ってきた相手がたとえ一ノ瀬ではなくても積極的に応じたいとは思えないのが本音である。29歳にもなって恋愛に対して低体温なままなのは両親の不仲が色濃く影響しているが、さらにあるふたりの男性の存在が真理子を恋愛から遠ざける原因となっているのは間違いなかった。ひとりは坂口悠馬。

坂口は真理子が初めて恋をして交際した相手である。

あれは確か、まだ恋愛低体温とは無縁の、高校1年生の夏だった。スポーツ推薦でサッカー部へ入部し、フォワードをしていた坂口への淡い恋心を自覚したと同時に坂口から告白され、ふたりはつき合い始めた。

――あのときまでは順調だったんだけどなあ……。

当時を思い出すといまだにため息が出る。

そう、あのときまでは――。だが初めて誰かを想う経験をした真理子は舞い上がり、好きな気持ちが日増しに膨らみ、抑えきれなくなったのだ。

「もっとたくさん会いたい」
「ねえ、好きって言って」

何度、坂口にねだったことだろう。

ところが坂口は部活が忙しいうえに寸暇は男友達との遊びを優先するタイプだった。男より女のほうが早熟だと言われているが、坂口は自身の想いを口には出せても、真剣に恋愛しようという気持ちは未成熟だったのかもしれない。

それでも坂口は最初の頃、ふたりで会う時間を何とか捻出していたものの、次第にお互いの気持ちの温度差は開き、結果、真理子は振られた。

「ごめん。いまの俺にはマリコが重い」

“重い”という言葉がいまでも抜けない棘のように突き刺さっている。告白された相手から振られたという現実にも打ちのめされた。――でも、坂口君に振られただけならいまがもっと違ってたかもしれない。

そう、一度恋愛でしくじっただけならここまで引きずらないはず……だった。だが4年前に別れた元彼との関係で、真理子は恋愛する方法が解らなくなってしまったのだ。

坂口に振られた傷を教訓に、短大の同級生から紹介された加藤圭太と恋人同士になると、今度は“重い女”という称号を払拭すべく真理子は「会いたい」「好き」という言葉を封印した。そうすれば今回こそうまく関係を育んでいけるはずだ、と信じていた。

だが、愛の言葉を口にしない真理子に対して加藤は「もっと気持ちを言葉にしてほしい。もっと甘えて」と言うようになった。会うたびその回数は増えたが、真理子は決して口にしなかった。

一旦、言葉にすれば気持ちがあふれて止まらなくなるのが怖かったからだ。しかし、本音を伝え合わなければ関係が深まるはずもなく、最終的に加藤は「マリコの気持ちが解らないよ……」と、去っていった。

こうして真理子の恋愛低体温な性質ができあがった。

好きな気持ちをどう伝えたらいいか解らなくなっちゃったんだよね……。それに、つき合ってもいずれ別れてしまうなら、友達のままでいたほうが楽。苦しまなくてすむもん。恋愛より楽しいことって他にもたくさん、あるはずだし。

――という真理子の恋愛話を聞いていた怜奈が口を開いた。

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