2015.08.21
SPECIAL TALK Vol.11スポーツの世界にも押し寄せるITの波
金丸:先ほど、ホワイリーさんとコミュニケーションをしたのはFacebookとおっしゃっていました。IT畑の人間として、ぜひ伺いたいのですが、アスリートの方にとってITというのはどのような存在ですか?
上地:非常に重要です。たとえば、SNSひとつとっても、単純に連絡を取る手段として活用していますし、どこにいても見られるのはすごくいいですよね。母も友達も私のフィードを見てくれているので、安心してくれているみたいです。私は海外に行くとあまり連絡を取らなくなってしまうので(笑)。現地の生活が楽しすぎて、つい連絡を忘れてしまうんですよね。海外に頻繁に行くような私たちが一番ITの恩恵を受けているんじゃないかと思います。
金丸:確かにそうかもしれせんね。また、SNS以外でも、スポーツの分野でITを戦略的に活用しているところが増えています。プロ野球では、データベース化された一球ごとの成績を利用することもあります。イチローの2軍時代のデータをベンチマーク化して本人や球団が気付いていない可能性を見出し、将来性のある有望選手をスカウトしたり、対戦相手の投球パターンを分析し試合の作戦を立てたりしています。客観的データに基づく意思決定は効果的です。車いすテニスの世界でも、こういった流れはあるのでしょうか?
上地:大きな大会であれば、スタッツが出て分析が可能です。しかし、小さな大会だと自分で調べていかないといけません。ファーストサーブが入ったときにどれだけポイントが取れているのかなど。いまはコーチとビデオを何度も見返しています。自分は高校を卒業したときに克服すべきだったのが、ミスを減らすことでした。そのミスを減らすには確率の高い方を選んで、コースや球の質を組み合わせていました。それによって勝つこともできていたと思うので、そういった分析や確率の重要性はコーチと一緒に感じていましたね。
金丸:現在、コーチはどのような方なのでしょうか?
上地:千川理光さんという、健常者の方でして、ロンドンパラリンピックの前からもう5年ほどお世話になっています。ご自身もプレイされていた方なのですが、現役時代からデータをしっかり分析して活かしていたと聞いています。私の場合は、どちらかというと感覚でテニスをしている部分が大きかったのですが、千川コーチに出会ったことで、感覚と理論を併せ持ったテニスができるようになりました。
金丸:なるほど。上地さんの強さの秘訣には、天性の感覚とコーチから授けられた理論とが合致した部分も大きいのですね。
上地:おっしゃる通りです。
金丸:ある意味、ビジネス世界も同じです。たとえば、ひと昔前のコンサルタントは経験に基づいてコンサルティングをしていました。経験に基づけば、いいアドバイスができるという前提です。コンサルタントの人はみんなグレイコンサルタントと言われていました。なぜなら、高齢で白髪の方が多かったからです。それが、企業経営がサイエンスだという流れになり、経験や勘ではなく、客観的なデータをベースにしたコンサルティングが主流になっていきました。それで若い人でもコンサルティングができるようになりました。何より事実に基づいたデータです。柔軟な若い人ほど、ITで武装するべきです。コミュニケーションの質と量が劇的に変わるので、若い人に付加価値が移りやすくなります。もちろんある程度の経験も必要になりますが、データを持っているだけで有利になります。サッカーの世界でも、ドイツがスペインのチームを研究しつくして、ワールドカップで勝利を収めましたよね。
上地:そうですね。確かに、今後はその流れが顕著になりそうです。
東京パラリンピックではバリアフリー化への期待も高まる
金丸:上地さんは、遠征で世界中を飛び回っていますが、各国の福祉の環境はどのように感じておられますか?他国と比べて、日本はどの程度なのでしょうか?
上地:設備面では日本が一番整っていて綺麗です。大体の駅にはエレベーターがあるとか、道路が舗装されていたりだとか、すごく使いやすい国だと思います。ただ、海外は整備がしっかりとしていない分、人と人同士が助け合う気持ちが強い印象です。障がいがあるから助けてあげようということではなく、ごく自然に手助けをしてくださる方が多い。そのように行動できるのは、日本より海外の方が多いと思います。
金丸:イギリスの人は階段を上がるときに手伝うのは習慣だと言っていました。
上地:本当にそういう感じですね。
金丸:ロンドンはパラリンピックを機会にバリアフリー化を進めたそうですね。
上地:そうですね。選手としても非常にやりやすかったです。パラリンピックは北京、ロンドンと年々盛り上がりを増しています。私はイギリスの選手とペアを組ませてもらっているので、イギリスの方とお話しする機会が多いのですが、2020年の東京パラリンピックへの期待をすごく感じますね。ロンドンを超える大会にしてくれるのではないか、と。
金丸:そんな中でも好きな国ってありますか?
上地:行ったことのある国で、お気に入りなのはフランスと韓国ですね。食べ物が好きというのもあるんですが、自国に誇りを持っている点がすごく素敵だと思います。フランスは(英語の国が近いので)英語を話す人が多いと思っていたのですが、そんなことはまったくありませんでした。車いすテニスの大会は地元のボランティアの方の協力で成り立っています。地元のおばちゃんが洗濯係をしてくれたり、私たちのお世話をしてくれたりする大会が多いんです。そういうところに行くと土地の特色を色濃く感じます。私自身も、その国ではその国の言葉で話したいと思っているので、目下フランス語と韓国語を勉強中です。
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