2015.03.21
SPECIAL TALK Vol.6“りん”に込められた父の思いと世界を意識しだした幼少期
金丸:ところで、ひらがなで「りん」という名前は、非常に珍しいですよね。どのような思いが込められているのでしょうか?
小林:名前は父が付けてくれました。小学1年生のときに「自分の名前の意味を調べよう」という宿題があり、父に聞いたところ、「英語だけじゃなく、中国語、スペイン語など、どんな国でも“りん”という名前がある。どんな国でも通じるから、この名前を付けた」と教えてくれました。
金丸:国際的に通用する名前ということですね。40年前にそのようなことを考えていたとは、実に先見性のあるお父様だったのですね。
小林:あえて、ひらがなにしたことにも意味があると教えてくれました。漢字にすると、意味をもちますよね。たとえば「凛とする」の凛なのか、「倫理観」の倫なのか、と。父からは「音だけをもたせるから、意味は自分で決めなさい。意味合いを付けるのは自分自身だ」と言われました。それを聞いて、「私は国境を越えて好きに生きていいんだ。そう生きるんだ」と感じたのを鮮明に覚えています。
金丸:まさに、今の小林さんに通じるエピソードですね。
後の運命を大きく変える先生との出会い
金丸:子ども時代で印象に残っている出来事はありますか?
小林:小学5年生のとき、先生に嫌われたことがあります。授業中は真面目だったのですが、宿題を一切してこなかったんですね。「授業中に本当に真面目に聞いていれば、宿題や復習をしなくてもわかる」と思っていたんです。それで、テストでも良い点数を取っていたものですから、先生に疎まれまして……。「りんさんは他の生徒に対して悪影響を与えている」と呼び出されたこともありました。
金丸:一見、優等生に見えるのに、意外なエピソードですね。
小林:「出る杭は打たれる」ということを強く感じた出来事でした。でも、この一件があったことで、「このまま公立の学校に行ったら、もっと叩かれるのではないか」と、受験を考えるようになりました。ただ、うちは裕福ではなかったので、私立中学校を受けることはできません。それなら、国公立で自分と同じぐらいの学力の人と学びたいと思い、5年生の終わりぐらいから駅前の小さな塾に行き始めました。でも、周りは4年生から通っている子ばかり。「もう中学受験は間に合わないから、頑張って高校受験を目指しましょう」と言われてしまいました。すごく悲しい気持ちになったのですが、そんな中、私に可能性を見いだして熱心に指導してくれた先生がいまして、共働きの両親に代わって、受験票を取りに行ってくれたりもしました。アルバイトの学生さんだったのですが、その先生とは今も親交があり、感謝しています。
金丸:小学校の先生といい、塾の先生といい、先生との出会いが人生に大きな影響を与えているのですね。そして、晴れて東京学芸大学付属高等学校に入学されるわけですね。
小林:私は先生との出会いの運が良くもあり、悪くもあるのです。高校1年生のときは、学年主任の先生のクラスでした。入学してすぐの三者面談で、いきなり「あなたはもっと理系を頑張らないと、東京大学に行くのは難しいですね」と言われました。それで違和感を覚えて、「まだ1年生の段階で大学受験の話をするのは、少し違うのではないですか?」と議論をしてしまったのです。その衝突があって、学校を辞めようと思うようになりました。
金丸:せっかく努力して入学した高校なのに、普通はそうは思いませんよね。やはり、自由に生きろというお父様の教えが生きているからでしょうか。なぜそこまで思うに至ったのでしょうか?
小林:日本では5教科を満遍なくできないと評価されませんよね。それこそ、国公立の大学に入ろうと思ったら必須です。私も東京大学を目指していたので、そのように言われたことは理解できます。しかし、その一方で「どうして悪い方ばかり見て、良い方を見てくれないのだろう」という気持ちが強くありました。もちろん、理系ができない自分の現実逃避という側面があったのかもしれませんが、英語も国語も社会もほぼ満点。学級委員長もやっていたのに、なぜ開口一番ダメな方を言われるのだろう、と。そういった葛藤を親に話したところ、「いいところを見てくれる教育というのは、日本の外にあるのかもしれないね」と言ってくれました。そこで、留学という選択肢を考え始めたのです。
金丸:ご両親の助言が実に素晴らしいですね。そんなこと、私には思いもつきません。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
2024.01.19
Vol.112
~庭師として素晴らしい日本文化を守り、次の世代へと伝えていきたい~
2023.12.21
Vol.111
~いつだって新しい人に出会いたい。シンプルな好奇心が新たな交流を生んだ~
2023.11.21
Vol.110
~自分が飲みたい日本酒で世界に挑戦し、日本酒業界に革命を起こしたい~
2023.10.20
Vol.109
~世界で一番愛される字を書きたい。世界を舞台に活躍する書道家へ~
2023.09.21
Vol.108
~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~
2023.08.21
Vol.107
~未曽有の事態に直面して生まれた医療の新しいカタチ~
2023.07.21
Vol.106
~日本における医療の弱みはウェルビーイングの浸透で改善できる~
おすすめ記事
2015.02.21
SPECIAL TALK Vol.5
~囲碁の盤面には経営の縮図がある。リーダーを目指す方こそ、挑戦して欲しい~
2016.03.03
初春の接待を制する、大人な空間で人気の名店6選
2023.06.03
「銀座で食事会」なら、思いっきりゴージャスに!個室でゆったり寛げるレストラン4選
2023.08.30
ハラスメント探偵~解決編~
オフィスに家族写真を飾っていたら“セクハラだ”と内部通報された男性社員。会社側のジャッジはいかに!?
- PR
2024.04.23
港区2大新名所・虎ノ門と麻布台。2つの”ヒルズ”で過ごす、最高の休日デートプランとは
2024.03.10
「コスパが良くて、特別感があって絶品!」歓送迎会の参加者全員が喜ぶ、銀座・丸の内の店3選
2023.09.13
ハラスメント探偵~解決編~
部下から♡の絵文字つきメッセージをもらい、その気になった上司が告白…それってセクハラ?
2015.08.14
予約をとるならいま! カニの名店『きた福』が銀座に進出
2016.07.20
有名企業の役員も御用達! 接待を成功に導くレストラン5選
2015.08.10
話題の企業の仕掛人たちがリアルに通い詰める常連店8選
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.04.20
男と女の答えあわせ【Q】
年上彼氏と2泊3日の初旅行。沖縄の高級ホテル滞在中、26歳女が男に幻滅したワケ
2024.04.16
Editor's Choice~fashion~
GWのラウンドが楽しみになる!日本初上陸から新作まで、いま注目のゴルフウエアブランド4選
2024.04.18
Editor's Choice~beauty & wellness~
【動画アリ】TWICE・SANAが出演するCMメイキングも!イヴ・サンローランから新アイコンリップが登場
2024.04.19
大人の週末ToDoリスト
【東カレ的・ハラカドの歩き方】パリ発のカフェや雑誌の図書館まで、注目ポイントを徹底解剖!
2024.04.21
Editor's Choice~hotel~
GWに足を延ばしたいサウナ5選!大自然に抱かれる世界初のガラスドーム型も!