シンガポールGPの誘惑 最終回：修二と慎吾の最終決着！まさかの展開に真美は！？

日曜日
On Sunday
AM11:00

本当はセントーサ島にも行きたかったが、慎吾がいると聞いてその予定は中止にした。『シー・アクアリウム』やマーライオン・タワーにも行きたかったのに残念だ。その変わり、ナイトレースまでゆっくりシンガポールの異文化体験を楽しむことにした。

「まずはチャイナタウンの『パゴダ・ストリート』で中国雑貨土産屋巡りから始めるよ」
「どうしたの、修二。何だか急に行動派になっちゃって」

確かに、普段あまり自分から率先して動くことはない。でも今日は最大限に真美をエスコートしたい気分なのだ。

活気溢れる、カラフルな屋台。軒を連ねる土産屋でなにやらいろいろと真美が物色している。シンガポールはさまざまな国の人が集まり、場所ごとに雰囲気が異なる。金融マンが集まるラッフルズプレースや、週末になると大盛り上がりの、一昨日行った『クラブ・ストリート』も好きだが、このようにローカルを肌で感じられる場所も好きだった。

「次はどこですか、修二先生！」
「次はインド！」

チャイナタウンで美味しいチキンライスを堪能した後は、地下鉄を乗り継ぎ、リトルインディアへと向かう。そこにはまたもや別世界が広がっていた。

「さっきのチャイナタウンとリトルインディアで、もう2カ国旅したみたいな気分になるね」

リトルインディアは街の匂いからインドそのものだ。女子なら絶対好きそうな鮮やかなサリーや雑貨類、そしてスパイスなどがたくさん売られていた。シンガポールにいながら、違う国に来たような不思議な錯覚。

真美が自宅用にスパイスを買って帰るようだ。片言の英語なのかインド語なのかよく分からない言葉で店員さんと上手にコミュニケーションを取っていた。

「私さ、意外に生活力あるんだよ。ちゃんと捕まえとかないとほかの男に取られちゃうよ！（笑）」
真美は冗談で言ったが、今の修二にとって全く笑えない冗談だった。

日曜日
On Sunday
PM2:00

「修二、大事な話があるんだけど」
「え、なに？」
結婚の話か、それとも慎吾の話かとドキリとする。

「…ハイティーをまだしてない」

なんだ、そんなこと、と言いかけてやめておく。真美にとってハイティーはシンガポールですることリストの上位にランクインしていた。定番の有名所でも良かったのだが、スコッツスクエアにある最近話題の『Time&Flow』のハイティーが良いという真美についていく。

ちなみにスコッツスクエアはハイエンドなブランド店やオシャレなセレクトショップが揃っており、買い物好きな女子にはぴったりの場所だ。しかもMRTオーチャード駅から徒歩5分というバツグンのロケーションにある。

「これってハイティーなの？　甘いお菓子だけの事を言うのかと思ってた」
「修二は女心が分かってないんだからぁ。女子は甘いスウィーツだけじゃなくて、こうゆう豪華で華やか、且つ美味しいのも求めてるんだよ」

『Time&Flow』で出てくる料理はまるでフルコースのような、でもシンガポールらしく豪勢で見栄えもよいハイティーだった。しかもまさかのシャンパンのフリーフロー付きだった。

「ここのハイティー、凄いでしょ？　シンガポールってオシャレな店が次々にオープンするんだよ。買い物も楽しいし、観光も楽しいし、ご飯も美味しいし...シンガポール、やっぱり好きだなぁ」

大きく頷く。この国は、毎回来るたびに違う魅力が知れて、さらに好きになる。

「お昼から幸せ過ぎだね。本当、修二といると幸せしかないよ。修二に結婚願望はなさそうだけど、でもずっと一緒に居られたらいいなと思う」

お酒の力も借りたのか、いつも避けてきた話題をストレートに言われ、思わず真美から目をそらしてしまった。「俺も…」と言いかけたとき、真美の携帯が鳴る。

「あ、慎吾さんからのメッセージだ。今日のナイトレース一緒に観戦しませんか、だって。…とっておきのVIP席を用意できるよ、って言ってくれてる。慎吾さん今夜暇なのかな（笑）。もちろん修二と一緒にいくって伝えるね」

しばらくして、返信メッセージの着信があった。真美が携帯を見て一瞬戸惑った。
「修二さんとじゃなくて、真美さんとふたりで行きたいので。だってさ…」