野心のゆくえ：同期と比べて壁にぶち当たる27歳男。尊敬する先輩の一言に心えぐられた夜

園田は外資系投資銀行に勤める男で、最近優香をやたらとデートに誘ってくるのだ。

園田は優香の同僚の知り合いで、仕事終わりに同僚と軽く飲んでいる時にたまたま現れた。向こうも同僚と2人で来ており、流れでそのまま4人で飲むことになり、それ以来彼からの熱烈アタックを受けるようになった。

「付き合ってる彼氏がいるから」と言っても園田は引かず、「僕ともたまに食事に行ってくれればそれでいいよ。優香ちゃんはきっと僕のこと好きになってくれるから」と自信と余裕たっぷりなのだ。それも嫌みがなく、スマートに。

最初の頃は、園田はただ遊びたいだけだろうと思っていた。翼には申し訳ないと思いながら、彼と何度か食事に行ったが、いつ会っても紳士的な態度で、ただギラギラしているだけの男ではない事がわかり優香の心は揺れ始めていた。

優香がはじめてきちんと付き合った相手は翼だった。それまでも何度も恋愛し、付き合った人も数人いるが、誰とも長く続かずすぐに終わった。「こんなに長く付き合えたのは翼だけ」その思いが強く、翼との関係は、優香にとっては特別なのだ。

―でも……―

いくら心を翼に戻そうとしても、自分の中から「でも」という考えがわき出てくる。

一方で、優香の状況を知らない翼は、次のデートのレストラン探しに夢中になっていた。好き嫌いもなく、こうして一緒に食事を楽しんでくれる彼女の存在は、本当にありがたいと思っている。

付き合って3年、2人の関係は落ち着いている。このままずっと一緒にいられればと思っている。

優香の喜ぶ顔も想像しながらレストランを選ぶ翼は、2人の間に不穏な空気が漂いだしたことに、まったく気づいていなかった。

次回、30歳になった翼の変貌ぶりと、優香との関係はどうなってる……？！