村上春樹好きな男 Vol.3

「ただ、鍵が見つかる」から。村上春樹好きな男が、春樹作品を愛す理由

「村上春樹」の作品は好きだろうか?

彼の作品に登場する男たちは、飄々としながらBARではピナ・コラーダを飲み、自宅のキッチンでは読者の食欲をそそるスパゲッティを作ってしまうほど、料理が上手い(と思われる)。そして決まって、何もせずとも女が寄ってくる。

そんな村上春樹作品を好む男たちが少なからず東京には存在し、そんな「村上春樹好きな男」が好きだという女たちも少なからず存在する。

「村上春樹好きな男」が気になってしまうという桃子が、彼らハルキストの生態を観察していく。

穏やかでミステリアスな商社マン暑苦しくて可愛げのある眼科医と、まったくタイプの異なる二人の「村上春樹好きな男」との時間を過ごした桃子。

ところで、なぜ桃子はこんなに「村上春樹好きな男」が気になってしまうのだろう。

桃子に「村上春樹好きな男」に対する特別な思いを抱かせるきっかけとなった、一人の少年がいた。


今週の村上春樹好きな男


名前:洸希(こうき)
年齢:29歳
職業:化学メーカー研究職
出身:青森県弘前市
学歴:慶應義塾大学理工学部卒業、理工学研究科修士課程修了
好きな村上春樹作品:『海辺のカフカ』『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
ほかの好きな作家:太宰治


桃子は、青森県弘前市で育った。本州の北端近くにあるその街は、上品で、物悲しくて、精神的な意味での湿度を感じさせる。桜が咲くのは5月。桃子は咲き誇る満開の桜よりも、お堀の水面を埋め尽くす散った花びらが好きだった。

桃子は、これといった特徴のない田舎の子供だった。大声でしゃべり、笑い、難しいことは考えなかった。

そんな桃子と村上春樹をつないだ、文学少年との出会い。


洸希とは、高校で出会った。

入学式が終わって教室に入ったとき、窓際に座る洸希の姿に、桃子は釘付けになった。

白い肌に、色素の薄いサラサラの髪。長いまつ毛が影を落とす、静かな目元。身体の線は細いが、首筋や鎖骨は筋張っていて、そこだけ妙に男っぽい。

これを一目惚れと呼ぶのだろう。

部活にも入らず人と群れない洸希は、どこか謎めいた存在だった。桃子はなんとか彼と仲良くなろうと、裏工作で遠足の班を一緒にしたり同じ委員に立候補したりと手を尽くした。

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