幸せな離婚 written by 内埜さくら Vol.12

幸せな離婚:病院で“あの女”との直接対決! そして妻の知らない新たな事実が明るみに

前回までのあらすじ

フリーの映画プロデューサーをしている真壁恭子(35)は夫との離婚を思案していた。

フリーライターの夫、竜也(41)の仕事が激減して生活費を入れなくなった上に、夫が家事を一切行わず恭子に甘えっぱなしだからである。だが黒木と始めた仕事によって竜也は軌道に乗り、借金と生活費を渡すようになる。

ところが竜也に篠崎美香との浮気疑惑が浮上。恭子自身も浮気はしていないが、俳優の清水に抱きしめられるハプニングが。そして、病院に駆けつけた竜也の不倫相手と恭子は直接対決する事態に陥る。だが、竜也が隠している事実は不倫だけに留まらなかった……!!

第11話:愉しい時間は長く続かない!? 夫の体調に異変が……!!


恭子が病院に到着すると、ロビーのソファーに腰かけている黒木を見つけた。目礼を交わし、お互い足早に歩み寄る。

「真壁さん、事務所で急に倒れたんです。すぐ起き上がろうとしたんですが額を押さえながらまた倒れそうになったので、わたしの独断で救急車を呼びました」

「ありがとうございます」礼を言うと「とにかく真壁さんのところへ」と促され、看護師の案内で竜也が寝かされている救急処置室へと向かう。

ベッドが三床ほどしか置かれていない手狭な室内に恭子は少し驚いた。同時にここが二次的に救急処置室として使用されているのだと解り、竜也の容体がそれほど深刻ではないと理解したが、他に患者がいないベッドの一床に寝かされている竜也の顔色はまだ悪い。

だが意識はしっかりとしていた。

「竜也、大丈夫……?」

言ってしまってから恭子は自分が想像以上に動揺していることに気づいた。大丈夫ではないから救急車で運ばれ今ここにいるのに、そう聞かれたって竜也は答えようがないではないか。

すると、弱々しい視線を恭子に向けながら竜也がふう、と大きく息を吐き出した。

「今はもう大丈夫。だけどさっきは驚いたなあ。めまいがして倒れたんだけど、起き上がろうとしても起き上がれなかった」

「ねえ、今までもめまい、したことあったの?」

「今日みたいにひどいのはなかったけど、たまにね。でも、めまいぐらいで騒ぐのもどうかと思って黙ってた」

「だけど……」竜也はもう40代なんだから、と言おうとすると、背後の扉が開いた。振り向くと竜也の診療を担当したと思われる医師が立っている。

医師に呼び出され、恭子は別室へと続く。

「ご主人、以前から何度かめまいがしていたそうですね」今聞いたばかりだったが恭子は頷く。

「今日は救急の診療ですから、めまいの原因を特定することはできませんでした。ただご主人は、他の人より三半規管が弱いのかもしれません。今後もめまいが続くようでしたら脳外科で診てもらってください」

そして、今夜は起き上がれるようならもう帰っていいですと言われ、恭子が救急処置室へ戻ると、竜也が起き上がろうとしているところだった。

「竜也のお母さんにも連絡したから、もうすぐ着くと思う。お母さんと会ってから帰ろう」と言いながら竜也の身体を支えていると、部屋の外でふたつの足音がする。

ひとりはヒールをカツカツと鳴らす音。もうひとりは男性らしき靴音である。ヒールの靴音は竜也の母、妙子だろうか。

しかし、この甲高い靴音はヒールが高いことを表している。67歳の妙子がこんなに高いヒールを履くだろうか。それとも別の患者さんのお見舞い? と考える間にもふたつの靴音がこちらへと近づいてくる。

そしてガラガラと引き戸が空き、ドアを開けた女性を見て恭子は心臓にザバンと氷水をかけられたように胸がドキリとした。そこに立っているのが篠崎美香だったからである。

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