幸せな離婚 written by 内埜さくら Vol.8

幸せな離婚:女には理解できない男同士の友情。2人のせいで真実は闇の中へ……!?

前回までのあらすじ

フリーの映画プロデューサーをしている真壁恭子(35)は夫との離婚を思案していた。

フリーライターの夫、竜也(41)の仕事が激減して生活費を入れなくなった上に、夫が家事を一切行わず恭子に甘えっぱなしだからである。

だが竜也の仕事は軌道に乗り、借金と生活費を渡すようになる。ところが竜也のパートナー黒木と恭子の親友、真実が不倫関係である事実が発覚し、竜也もなにかを隠していると知らされた恭子が取った行動は……?

第7話:一番の女友達の恋人は、まさかのあの男だった……!


「わたし、しばらく真実と一緒にいるから」

夏子が助け舟を出してくれた。真実が恭子に「自分の旦那さんの管理もちゃんとした方がいいよ」と言い放ったことでさらに場の空気が凍りついたため、恭子と竜也、黒木の3人で真実の部屋を辞すのが賢明だとひと言で促してくれたのだ。

確かに今ここで真実の言葉を竜也に確かめるのは得策ではない。黒木と真実の問題から自分と竜也の夫婦問題に話がすり替わってしまう。

「腕の傷は大丈夫ですか?」

竜也の気遣いにジャケットを着ながら、「かすり傷だから」と答える黒木のふたりに恭子は目配せし、夏子に「後で連絡するね」と言い置いて3人は部屋を出た。

とはいえ2人の今日までの経緯と真実が言った意味を知っておいた方がいい立場の恭子は、映画の打ち上げパーティーの会場に戻るわけにいかず、かといって竜也と自宅にまっすぐ戻るわけにもいかない。

そこで渋谷の『桜丘カフェ』に寄り、話を聞くことにした。


「今夜の真実とのこと、説明していただけますか?」

カフェラテをひと口飲んでから恭子は黒木を見据えた。黒木の横には竜也が座っている。竜也をあえて自分の隣に座らせなかったのは、竜也と黒木がアイコンタクトで嘘を共有しても気づけないからだ。男ふたりを隣同士にすれば、その嘘が見破れると判断した。

「えー、それはですね……」

まだ青ざめている黒木の語るところによれば、真実は営業に行った先の社員だったという。話をするうちにお互いワイン好きだと解って意気投合し、銀座の『フレンチバル ルフージュ』での食事をきっかけに抜き差しならない関係になったそうだ。

――結婚しているくせに……。

心の中でつぶやくと、恭子は自分が間違った道を異様に嫌っている事実に気づく。自活できる職を持ちなさい、そして結婚と出産も経験しなさいと、それが正義だと振りかざす母の影響だろうかとうんざりするが、今はそんな思いにとらわれている場合ではない。

「じゃあどうして真実は今日、包丁なんて持ち出したんですか?」

すると、それまで沈黙を貫いていた竜也が口を開く。

「黒木さんとこ、ずっと不妊治療をしてて最近やっと子供ができたそうなんだ。それで……」

竜也に視線を送られた黒木が話を引き取った。

「妻の身体がまだ不安定なので、真実さんとの関係を知られたら困るんです。別れ話をしに行ったとき、うっかり妻の妊娠を漏らしてしまったら、包丁を出されて『許さない、殺してやる』と」

「当たり前じゃないですか! 黒木さん、あなた自分だけいいとこどりしようなんて、都合が良すぎるにもほどがあるわ」

不倫は双方が悪いのは百も承知だ。だが、都合が悪くなれば相手をポイ捨てし、自身の悪行はなかったことにしてのうのうと家庭に戻ろうとする黒木に、恭子は猛烈に腹が立った。

その怒りを抑えきれぬまま、今度は竜也へと水を向ける。

「あなた、黒木さんがなにをしているか知ってたのね」

「知ってたって恭子に言うことじゃないだろう。俺も仕事で彼女には会ったことがあったんだよ。

黒木さんと3人で飲んだ後、タクシーで彼女の自宅まで送ったこともあるから場所は知ってたんだ。それで今日、仕事の話で黒木さんに電話したら『真実さんの部屋に来てくれ!』って呼ばれたからさ……」

それにしても、真実さんと恭子が友達だったなんてと言う竜也に対して、恭子はまだ質問しなければならないことがある。

「それは置いといて、さっき真実が言ってた『自分の旦那さんの管理もちゃんとした方がいい』ってあれ、どういう意味?」

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