東洋経済・東京鉄道事情 Vol.14

誰もが一度は迷子になる! 世界一複雑な新宿駅の地下通路を読み解いてみた

もし新宿駅で就活スーツ姿の青ざめている人がいたら、それは面接に遅刻するかしないかで人生の分岐点に立たされてしまっている、ちょうどその瞬間かもしれない。

遅刻した就活中の彼らに対して企業側はどんな反応をするのだろうか。①事前に調べておくことができるのだから自己管理不足、個人の責任としてあくまでも「遅刻」ということで減点とする、②新宿駅は世界一混んでいる駅としてギネスにも認定されている特殊な場所であるから「仕方がない」と、駅側に理由があるとする――。

①か②かはその企業の体質によっても異なるであろうが、新宿駅とは、企業が①のような観点で個人の資質を問う、格好の判断材料として使えるかもしれない。学生にとっても企業側の姿勢や社風を知るいい材料になるかもしれない。

2. 新宿駅は「バグ」多発地帯?

コンピュータプログラムの不具合を「バグ」と言うが、生活の隅々までコンピュータが行き渡った今、バグは絶滅するどころか、増える一方である。今でもさまざまな重要な社会インフラ上でシステムトラブルが頻繁に起こっている。

そうした不安定な基盤の上にこの社会があることはちょっと不思議なことだ。そして、プログラムが複雑で膨大になればなるほどバグが生じ、それは完全な機械であるよりもむしろ人間的で、気まぐれな部分を持ちながら動作する。

複雑な新宿駅はもともと迷うために設計されているのではない。駅は都市の大量の人間の動きを成立させるために生まれた機械であるはずだ。しかし、複雑になればなるほどそこには不具合とも言える迷路的な空間が発生し、迷子を生じさせる。新宿駅のもつ迷路的な空間は、まるでバグのようである。

新宿駅でさまよえる子羊たちは新宿駅のバグによる犠牲者たちなのか。

3. 地下道は近道である

新宿駅で迷うとき、そのほとんどは地下の通路や広場で迷っている。プラットホームで迷うことはあまりない。多くはプラットホームから階段で下がり、地下通路に入ったときに迷うだろう。そんな通路も本来なら地点Aと地点Bを結ぶというシンプルなものから始まったはずが、いくつもの結びが重なって複合化し、複雑になった。新宿駅は改札を出てからも地下通路網が続いている。

しかしそもそもどうして地下に通路があるのであろうか。

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