赤池直樹。森山未來似の33歳。公認会計士、年収:900万円。
モテキのあの主人公に似ている赤池直樹は、けっしてハンサムの類の顔ではないが、ごくごく少数の女性にとっては、「とてつもなくタイプ」らしい。
スタイル抜群のヨガインストラクター・那奈(28歳)に、ラテン系のお色気客室乗務員の史織(24歳)から好意を寄せられ、右往左往中の赤池直樹。
モテる男へのコンプレックスをこじらせて大人になった直樹への神様のプレゼントのような人生初めてのモテキ。この千載一遇のチャンスを無駄にしては罪になる!とばかりに今日もハッスルする直樹だが・・・?
第1回:モテキ到来!こんなに綺麗なヨガインストラクターと一緒に暮したら…!?
第2回:モテキ到来の赤池直樹、空飛ぶセクシーCAとまさかの同棲へ…!?
「直樹くん、ノルウェイの森のワタナベに似てるよね。」
2ヶ月前開催された大学時代の悪友に誘われた合コン。慶応卒の華やかなキャリア女性たちと聞いて、ドキマギしながら参加したその飲み会の自己紹介から僕は失敗した。
バカにされないようにと、インテリジェンスの香りを纏おうとした自己紹介で、
「村上春樹が好きです。」と言った僕を見て、一瞬の沈黙の後、女性一同大笑い。
東京で学歴も経済力も手に入れた美しい顔の女性たちにとっては、男をよいしょする必要なんか無いのだろう。某メーカー課長補佐の女などは、「こじらせ男」と腹を捩って笑う始末だ。
誠に不名誉な称号を授けられたその合コンで、「春樹先生に謝れ!」と内心えらく立腹していた僕に、こそっと耳うちして笑ったのが、出版社勤務の麻衣子(32)だった。
艶やかな黒髪、小さな顔につぶらな瞳の麻衣子は、どことなく、砂漠からひょこっと顔を出して周囲をキョロキョロと見渡すミーアキャットを彷彿とさせる。
「ノルウェイの森の主人公のワタナベ」というやたら感傷的な男に似ていると言われたのもびっくりだが、それよりも、村上春樹の小説の登場人物の名前がするりと出てきて、かつ、その主人公の性格を思い描けるという麻衣子は、とても知性的で、かつ情熱的に見えた。
仕事柄、本や映画などの情報収集は欠かさないそうで、童顔な顔に似合わず、インテリジェンス溢れる美女だ。
合コンの後半は、そこから、自分のどこがワタナベに似ているのかという麻衣子の解説と、1Q84に出てくる「リトルピープル」とは何者(物)かという、自論を語り合った。
嫌らしい意味もなく、麻衣子ともっと喋りたくて、二人だけで二次会に行くことになり、合コンを主催した悪友からバッシングとも、叱咤激励ともとれるヤジを飛ばされた。