30歳を超えた女に期待をもたせるのは罪?
—同じ趣味を持つ女性というのは何と楽で楽しいのだろう。—
僕は、恋愛とは、女性をもてなし、楽しませ、喜ばせ、機嫌を損なう事態を全力回避し、そうして、ご褒美として、キスや、一線を”越えさせていただける”ものと思っていた。
恵まれない学生時代の経験からの悲しいサガだろう。基本的には女が受け身、男が奉仕の精神でとことん忠義を尽くすものだと信じきっていたのだ。
しかし。こと麻衣子に関しては、「奉仕」など考えることもなく、「楽しませよう」と気張ることもなく、話題が湯水のごとく湧き上がってくる。
オフィスが近いこともあり、2ヶ月前の合コン以来、週に1、2度は二人でランチを食べたり、会社終わりにサク飯を食べることもあった。
こんなにも構えることなく自然体で話せる女性は初めてで、生まれて初めての女友達という存在に、僕は浮かれて悪友に報告すると、彼はあんぐりと口を開けてこう言った。
「麻衣子ちゃん、32歳だろ?30歳を超えた女を、お友達ゴッコで期待をもたせてる場合か!」
悪友の言葉に、僕はその時、初めて麻衣子を、「女」として意識した。
—麻衣子は、僕に何かを期待しているのか・・・?—
精神的・経済的に自立している女の人生に介入する難しさ・・・
木曜日の夜。会社帰りに六本木TSUTAYAで待ち合わせて、お茶をしていたとき、ふと、麻衣子が読んでいたインテリア雑誌に目が止まった。
—もし、麻衣子と結婚したら、どんな暮らしになるのだろう。—
本当はストレートにそう聞きたかったが、チキンな僕にそんな勇気があるはずもない。内心を悟られないように、遠回しに質問をしてみた。
「ねぇ、もしもだよ?麻衣子が、誰かと結婚したら、どんな家に住みたい?」