2016.05.07
鎌倉カレンダー Vol.1充実の社会人生活の後、訪れた「焦燥感」。自分の中の何かが擦り減っていく
会社に入社し3年目くらいまでは仕事は多忙を極め、思った以上に大変な思いをすることもありました。すぐに辞めたり、クビになる同僚もいました。でも、まさにあの映画に登場するようなカッコいい上司や先輩もいて、僕はこの業界に属していることにかなりの満足感を味わっていました。
朝から夜中まで働き、その後六本木だの西麻布に飲みに行き、また朝から出勤、なんてこともよくやりましたよ。男って、ああいう時期は仕事が忙しければ忙しいほど、プライベートのエネルギーも湧くものなのでしょうか。
でも、4、5年目になると、何だかこれでいいのだろうか。という、うまく説明のできない焦燥感が生まれました。仕事は煮え湯を飲み下したような感覚で、忙しさに振り回されるだけでもなく段々と自分のペースも持てるようになりましたが、その分少し前まで持っていたガツガツとした野心のようなものが薄れ、表面的に仕事をするようになってしまいました。
同年代の他の奴らは、テレビ局でドラマを作って人を楽しませたり、高い技術で家電製品を作り人の生活を便利にしている。一方で僕は、「数字」や「経済」、良くて「企業」ばかり相手にしていて、直接誰の何の役にも立っていない。それなのに、人より何倍も高い給料をもらっている。そんなの詐欺みたいだと、そんな考えが頭の中に住み着くようになったんです。
また、一時ほどではありませんが、やはり外銀は派手なイメージがあるのが、同期や先輩に呼ばれる合コンやホームパーティには、たぶん一定以上の稼ぎがないと出会えない種類の綺麗な女の人が来ます。プライベートではそんな派手な世界をもちろん楽しんだ時期もありましたが、酒を飲んで夜遅くまで騒ぎ二日酔いで遅い朝を迎える週末が続くと、自分の中の何かが少しずつ擦り減っていくような感覚がありました。
金を使って遊んで騒いでも、何も残らない。名前すら朧げな薄っぺらい人間関係や、自分自信に嫌悪感を持ったりもしました。
都心から車で約1時間。学生時代とは全く違う印象を持った「鎌倉」
鎌倉にサーフィンに初めて来たのは、そんな焦燥感を無視できなくなっていた頃です。
僕は東京の世田谷の自由が丘で生まれ育ちました。家庭環境は中の上くらいでしょうか、別に金持ちではないけど、年に1、2回海外旅行をするような家庭。大学までずっと都内で、学生時代は新宿や渋谷でウロウロと遊ぶような青春時代を過ごしました。鎌倉という街は、学校の遠足のような行事や、友人と夏に数回足を運んだ程度の場所でした。
その頃は、大仏にも寺にも興味なんてないし、ナンパと日焼け目当てで行った江の島の海岸は混雑していて、お世辞にも綺麗とは言えない海に魅力は全く感じなかった。なんでわざわざ面倒なイベントに参加してしまったのだろうと、ウンザリとした記憶もあります。
「一緒に海行く?」と誘ってくれたのは、会社の先輩です。1年中日焼けしていてあまり人と群れずに飄々としている先輩に、最近何をしていても何だか落ち着かないし、楽しくないというような話をしたら、海に連れ出してくれたんです。あの鎌倉かぁ、とは思いつつも、日々の生活にマンネリしていた僕は、早速先輩について行きました。
東京から鎌倉までは、車で1時間ほど。早朝に連れて行かれた由比ヶ浜の海は、相変わらず綺麗とは言えない色をしていました。
けれど、そのゆったりとした空気は東京とは全く別物でした。見晴らしの良い海。建物は低く、空が広く大きく見えた。僕らと同じサーファーの他に、海岸には犬の散歩をしてる親子なんかもいました。僕はそんな風景に、意外にも、すんなりと落ち着いた気分になれた。学生時代に抱いたのとは、全く違う印象でした。
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